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Channel: NICHIGO PRESS |日豪プレスが運営するオーストラリア生活総合情報サイト »進出日本企業インタビュー
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オーストラリア三菱商事会社 髙田光進 取締役社長

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進出日本企業
●PROFILE
たかだ・みつゆき 三菱商事執行役員
兼オーストラリア三菱商事会社取締役社長
兼ニュージーランド三菱商事会社取締役社長
<略歴>
1981年慶応義塾大学経済学部卒。
同年三菱商事入社。09年鉄鋼製品
本部長。2012年4月より現職。

進出日本企業  トップ・インタビュー
新連載・第1回

オーストラリア三菱商事会社

髙田光進 取締役社長

日本の総合商社は、日豪が相互補完的な経済関係を築く中で重要な役割を果たしてきた。三菱商事にとっても、豪州は収益の大きな部分を占める戦略的な拠点となっている。同社のオーストラリア事業の現状と展望について、三菱商事オーストラリア会社(本社メルボルン)の髙田光進社長に話を聞いた。


(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

信頼できるパートナーと手を組み
日豪の経済と社会に貢献していく

 

資源の安定供給で日本を支える

 
——豪州が資源供給基地として日本の経済発展を支える一方、日本も豪州から資源を輸入しインフラ整備を支援するなど豪州の社会に貢献してきました。総合商社のビジネス・モデルは近年、大きく変化しましたが、三菱商事のグローバルな事業戦略における豪州事業の重要性はますます拡大しています。

豪州は三菱商事が事業を行っている国・地域の中で最も大きな収益を挙げています。2011年度は連結純利益の約40%を占めており、非常に重要な国なのです。

総合商社の業態は、貿易から投資へ軸足を移しました。特に豪州は資源関係の投資では最重要国の1つ。当社にとっても、金属・エネルギー資源は豪州事業の大きな柱です。
 
——原料炭(製鉄用の石炭)の事業投資先である「BHPビリトン・ミツビシ・アライアンス」(BMA=QLD州)は、日本の原料炭供給に大きく貢献しています。石炭事業の現況についてお聞かせください。

1968年に設立した子会社の「三菱デベロップメント」(MDP)を通して、一般炭(主に燃料用の石炭)や原料炭などさまざまな権益に投資してきました。2001年には、BHPビリトン(英豪系資源大手)と折半出資して合弁のBMAを立ち上げました。

こうした長い歴史を背景に、現在、豪州の原料炭の中でも特に優良な鉱山の権益を保有しているのが当社の強みです。最高品質の原料炭をBHPビリトンとともに開発し、出荷しています。


三菱商事子会社MDPが参加するNSW州の合弁プロジェクト、ワークワース炭鉱

世界の原料炭の海上貿易量に占めるBMAのシェアはおよそ3割と世界最大であり、三菱商事はその半分のシェアを有していることになります。中長期的に原料炭の世界的な需要拡大が見込まれる中、日本をはじめとした世界の顧客に対して原料炭の安定供給を行っていくため、11年に新規2炭鉱の開発と専用港湾の拡張工事について投資決定を行い、現在建設工事を進めています。

一方、一般炭は、QLD州ではクレアモント鉱山(MDPが31.4%出資)、NSW州ではコール・アンド・アライド・インダストリーズ(C&A=MDPが20%出資)を通じた出資を含む4つの鉱山の権益を保有しています。
 
——震災後、日本では火力発電用エネルギーとして液化天然ガス(LNG)の重要性が増し、埋蔵量が多い豪州のプロジェクトが注目を集めています。

LNG事業では、三井物産との折半出資で合弁会社「ジャパン・オーストラリアLNG」(MIMI)を形成し、1985年にWA州の天然ガス開発事業「ノースウェスト・シェルフ」に参加しています。MIMIを通して、ウッドサイド・ペトロリアム(豪石油ガス生産大手)、BHPビリトン、BP(英石油大手)、シェブロン(米石油大手)、シェル(英・オランダ系石油大手)といった世界の資源・石油メジャーと肩を並べて合弁事業に参画しているのです。また、ブラウズ(WA州沖に開発計画中のガス田)についても、MIMIが約14.7%の権益を取得しています。

豪州では現在、数多くのLNG事業があります。豪州のLNG生産量は2011年には約2,000万トンでしたが、20年には1億トンを超え、現在1位のカタールを抜き、世界最大のLNG供給国となる見通しです。

豪州は相対的にカントリー・リスクが低く、地理的にも日本と近いという利点があります。原発問題を背景に代替エネルギーを求める動きもあって、石炭やLNGを活用した発電の需要は今後さらに拡大していくでしょう。

日本経済への貢献の一環として、エネルギーの安定的な供給源を確保することは重要です。そうした認識の下で、私たちもさまざまな開発を行っています。

 

豪国内のインフラ整備にも注力

——豪州は鉱物だけではなく食糧資源の供給基地としても世界的に重要性が高まっています。その安定供給は日本の食糧安保にも不可欠です。食糧・食品など鉱物資源以外の有望な事業の展望は?


素晴らしい自然の中で営まれるTAS州の酪農

食糧関連の主な事業投資先としては、飼料生産と穀物輸出を手掛ける子会社「リベリナ」(豪飼料・穀物会社=本社ブリスベン)があります。QLD州とNSW州では、家畜の餌となる配合飼料を製造し、国内向けに養鶏・養豚や食肉牛・酪農牛用などの飼料として販売。パース支店では、主に西豪州や東豪州の小麦・大麦・飼料穀物を日本や東南アジアに輸出しています。

一方、食品事業では、チーズやミルク・パウダー(粉乳)の輸出に力を入れています。このほど、三菱商事が24%を出資してマレー・ゴールバーン(豪乳業大手)や酪農家と手を組み、TAS州に粉乳をはじめとする乳製品の製造会社を設立しました。粉乳は幼児向けのほか、日本では缶コーヒーや乳飲料の原料としても需要が多いのです。10月に完成予定の工場を粉乳の製造拠点とし、アジア諸国へも販売を拡大していく狙いです。

豪州は金属、エネルギー、農産物を3つの柱とする資源国ですが、それ以外にも今後、豪州の社会に貢献できる事業を展開していきたいと考えています。

例えば鉄道や水事業などのインフラ整備。子会社「トリリティ」(アデレード)は、上下水道から再生水、海水淡水化まで、設計、施工、運営・管理などを総合的に国内で事業展開しています。水は日常生活に不可欠な重要な資源です。こうしたインフラ整備事業にも力を入れていきます。

三菱商事の社是に、「所期奉公」「処事光明」「立業貿易」という「三綱領」があります。この中で「所期奉公」は社会貢献を意味します。豪州でも地域社会に貢献する活動を熱心に行っています。例としては、オーストラリア室内管弦楽団(ACO)やビクトリア国立美術館、WA州技術者コンテストなどへの寄附、グレート・バリア・リーフでのサンゴ礁保全プロジェクトへの参画、各奨学金の拠出などがあります。日本に豪州文化を伝える活動の一環として、日本のオーストラリアン・フットボール・チームも支援しています。

輸出競争力は低下も先進国の必然

 
——豪州事業が直面している主な課題は?

まず、好調な資源部門と他産業の格差が広がるという経済の二重構造。これまでは、04年から始まった世界的な資源価格の高騰を背景に、政府の財政状況も歳入が潤って健全な状況で推移してきました。しかし、ここにきて資源価格が調整局面に入り、政府の歳入が減少すればこれまで通りの歳出が続けられるかどうか。緊縮財政化する可能性も秘めています。

2つ目は、これまでの資源価格高騰による豪ドル高。製造業をはじめ輸出競争力がどんどん損なわれています。従来は資源価格が下がれば資源国通貨である豪ドルは下落していましたが、現在は資源価格が下がっても豪ドルは高止まりしています。豪州の連邦・州の財政は、ほかの国と比較するとまだまだ健全な財政状況にあるため、円と同様に、「安定通貨」として豪ドルが買い続けられていると見ています。これも輸出依存度の高い事業では、課題と言えるでしょう。

3つ目は労使関係。鉱山でのストライキなど、労組の活動が活発化しています。今後、ビジネス環境に影響を与える要因として頭に入れておく必要があります。労働コストも、世界的に見て非常に高い水準になってきています。

ただ、社会が成熟した豪州のような国家では、これらの課題に直面することは必然的に起こることです。先進国かつ資源国である豪州は、国状もきわめて安定していて、カントリー・リスクは低いと言えるでしょう。

 
——現状と課題を踏まえて、将来に向けたオーストラリア事業のビジョンを聞かせてください。

エネルギーと金属資源の重要な供給基地として、日本経済とアジアを中心としたそのほかの国の経済を支えていくという、豪州の位置付けは今後も変わらないと思います。三菱商事グループとしても、豪州の資源投資は今後も事業の大きな柱であり続けるでしょう。

一方で、資源以外にも、先述の穀物飼料の供給、水事業をはじめとするインフラ整備、自動車の輸入販売など、豪国内市場向けにもさまざまな事業を展開しています。それらの国内事業を通して社会や地域の発展に貢献し、利益を還元していくことも非常に大切です。

豪州の信頼できるパートナーとともに事業を展開していく姿勢は、この国での日本企業の成功モデルの本質だと思います。当社も資源開発ではBHPビリトンやリオ・ティントなどと組んできました。インフラ整備など今後の新事業においても、豪州の優良な戦略的パートナーと一緒に歩んでいくことがきわめて重要だと考えています。

<会社概要>
●英文会社名:Mitsubishi Australia Ltd.
●企業形態:三菱商事の現地法人
●代表者:髙田光進・代表取締役
● 拠点:メルボルン本店、シドニー支店、パース支店、ブリスベン分室
●社員数:邦人社員13人、現地社員87人
● 主な事業:エネルギー、石炭、鉄鉱石、鉄鋼製品、非鉄金属、機械、自動車設備、化学品、食品、資材
 
<沿革>
1956年 駐在員事務所設立
1958年 現地法人化
2004年 本店をシドニーからメルボルンに移転
 
 
<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:「一燈照隅、万燈照国」
2. 今読んでいる本:「修身教授録」森信三・著
3. オーストラリアの好きなところ:豊かな自然、美しい街並み、すばらしい気候、フレンドリーな人々、美味しい食べ物
4. 外から見た日本の印象:全体的に元気がなく「縮小均衡」に向かっている
5. 好きな音楽:ワーグナー「神々の黄昏」などクラシック音楽
6. 尊敬する人:加藤寛(慶応義塾大学名誉教授)
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:マイケル・サンデル教授、グレッグ・ノーマン、ニコール・キッドマン
8. 趣味:読書、音楽鑑賞、ゴルフ
9. 将来の夢:世界遺産めぐり
10. カラオケの十八番:「瞳を閉じて」

アイコム・オーストラリア 薦田雅彦 マネジング・ディレクター

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進出日本企業
●PROFILE
こもだまさひこ
アイコム・オーストラリア・マネジング・ディレクター
<略歴>
1984年アイコム入社、87年アイコム・アメリカ出向(サービス部門)、96年アイコム・シンガポール駐在(部材調達)、98年アジア・アイコム(台湾)出向、2012年7月より現職。

進出日本企業  トップ・インタビュー
第2回

アイコム・オーストラリア

薦田雅彦 マネジング・ディレクター

 歴史的な円高を背景に日本製造業の海外移転が加速する中で、あくまでも付加価値の高い「メイド・イン・ジャパン」の商品で世界に勝負を挑んでいる企業がある。無線通信機器やネットワーク機器などの製造・販売を手がけるアイコム(大阪市平野区)。その在豪現地法人、アイコム・オーストラリア(VIC州クレイトン)の事業戦略について、薦田雅彦マネジング・ディレクターに話を聞いた。

(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

無線デジタル技術で世界最先端を行く
追随許さぬメイド・イン・ジャパンの底力

 

開発と製造、2つの技術に注力

——アイコムとはどんな企業なのか。沿革や主な事業・商品など会社の概要について教えてください。

 アイコムは無線通信技術を基盤とした各種無線通信機器(トランシーバー)・無線LAN技術を利用したネットワーク機器などの開発・製造・販売を事業内容としている会社です。

1964年、井上電機製作所を設立しアマチュア無線機の第1号機を開発、販売を始めました。その後、ドイツや米国、豪州など世界各地に販売拠点を構築するとともに、陸上業務用、海上用、航空用などの無線機、さらには当社の無線技術を応用した無線LA N機器、IP電話システムなどへと業容を拡大してきました。

これまでアイコムが一貫して念頭に置いてきたのは「技術」の重視です。製造業には「商品開発技術」と「製造技術」が要求されますが、アイコムはこの2つの技術を磨いてきました。社是に「常に最高の技術集団であれ」を掲げているのはこのためです。創業より一貫して日本国内生産を行っており、1988年に製造部門を子会社化した和歌山アイコムを設立、2009年には第2工場となる和歌山アイコム紀の川工場を新設しました。またアイコムは無線通信のデジタル化技術、製品開発では国内外の先端を走っています。

 

災害時の通信確保で豪州社会に貢献

——オーストラリア事業の現状はいかがですか?

陸上用業務、海上用、アマチュア、航空機用無線機の販売、修理・サービスが主な事業です。主力商品は、陸上用業務無線機で売上の約6割を占めています。その中でCB無線機、デジタル無線機などが市場評価に置いて群を抜いています。

陸上用業務無線機は豪州国内の顧客に幅広く使っていただいています。例えば、緊急救助隊(SES)や地方消防隊(CFA)など災害現場で活躍する救急隊員には、その信頼性で高い支持を得ています。CB無線機は免許不要で4輪駆動車のドライバーなどアウトドアのレジャー・ユースに使われている一方、日本製の高品質製品として強い信頼を獲得しているため、業務用にも多数使用されています。

前述の通り、陸上用業務無線機のデジタル化技術では競合他社の追随を許さず、他社との明確な違いを打ち出しています。陸上用業務無線機の豪州市場において、屈指のメーカーとして認識されており、常にトップ・グループの一員として他社としのぎを削っています。

 
——アイコムの世界ネットワークの中で豪州市場の位置付けは?

進出日本企業
現場で活躍する陸上用業務無線機

豪州の人口約2,100万人に対して最大市場の米国は約3億1,300万人。国内市場の規模は限られていますが、豪州の無線機技術は、さまざまな場面で最先端を走っています。

例えば、国連に採用されている陸上業務用途HF無線機メーカーのうち2つは豪州のメーカーです。

本社の日本での陸上業務用途HF無線機の新開発の際には、無線機技術の最先端市場にある当社の助言が大いに貢献しました。南半球にある小さな現地法人という捉えられ方ではなく、果敢にアタックする革新的な企業という評価を受けています。

また、社会貢献も積極的に行っています。大規模災害発生時の通信確保には無線機が必須とされていることから、09年にV IC州を襲った山火事「ブラック・サタデー」や、10年末から11年初頭にかけてのQLD州の大規模洪水、同年のニュージーランド・クライストチャーチ地震などの際には、多数の無線機を寄贈しています。

 

価格競争力と高品質を両立

——アイコムの無線機器はすべて日本製です。円高や新興国メーカーの台頭で日本製造業の空洞化が懸念されていますが、メイド・イン・ジャパンを貫いていますね。

アジア製の低価格品は近年とみに存在感を増しており、品質も以前と比べ物にならないほど改善されています。アイコムは部材の海外調達比率を高め、日本で組立、検査を行うことで高品質な無線機器を競争力のある価格で提供できるように努力しています。ただ、10年前にはなかった模倣製品も特にアジア市場を席巻しており、競合他社との純粋な競争以上の脅威になりつつあります。

豪州市場は、まだまだ模倣品の流入は少ないようですが、いずれ大きな問題となるのは確実です。そうした状況の中でも、アイコムのデジタル化技術はアジアの低価格品が真似できるものではありません。デジタル化技術で実現できる明瞭な音質、通信セキュリティー、周波数占有率の効率化などで明確な差をつけ、1歩先を行く技術力で勝負しています。

 
——豪州の国内経済は、好調だった資源部門が商品価格の下落で先行きに不透明感が出てきているほか、豪ドル高で疲弊している産業もあります。労賃など高コスト体質も障害になっています。アイコムにとって、豪州事業の課題とリスク要因は何ですか?

欧州の信用不安、米国の経済建て直しという状況で、ほかの現地法人が苦戦している中、アイコムの売上は資源部門の恩恵を受けて好調に推移してきました。ところが、資源ブームと言われた豪州の鉱山開発も調整の兆候が見え始めています。売上の牽引役であった鉱山市場向け販売への依存から脱却を急ぎ、軸足を早急に移行する必要があると感じています。年末には新デジタル機の市場投入など商材もそろってくることから、陸上用業務無線機、特にデジタル機に注力し、販売促進活動を進めていきます。

また、世界全体の傾向ではありますが、無線機業界で働く人員は年齢層が高くなっています。IT業界の隆盛、ソフトウエア開発などが若者を惹きつけ、新しい血がこの無線業界に入って来ないという問題があります。もともと豪州は人件費が高い上に、こうした人材不足が深刻化しています。適正な人材の獲得がますます困難になっています。これを業界全体の問題と捉え、アイコムも豪州の無線機業界団体に加入し、研修生の受け入れや奨学金の交付など新しい人材の育成に協力しています。

 

先端技術とソリューションで競争に勝つ

——現状と課題を踏まえて、将来に向けた豪州市場でのビジネス戦略について考えを聞かせてください。

「無線機1台いくら」というボックスムーバー(単品売り)から脱却し、ユーザーが必要としているソリューションを的確に提供できる無線システム・プロバイダーを目指して、競争に打ち勝って行くつもりです。そのために専任の部門も社内に立ち上げました。最先端のデジタル技術とともに、システム・プロバイダーとして生き残りをかけた競争に臨んでいきます。

<会社概要>
●英文会社名:Icom (Australia) Pty. Ltd. 
●企業形態:アイコムの現地法人
●代表者:薦田雅彦マネジング・ディレクター 
●拠点:VIC州クレイトン市
●社員数:駐在員3人、現地社員20人
●主な事業:豪州国内、南太平洋諸国への無線機の販売、修理・サービス
<沿革>
1982年 アイコム・オーストラリアをビクトリア州メルボルンに設立。
2005年 メルボルン近郊クレイトン市の現社屋に移転。

<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:一期一会
2. 今読んでいる本:「人間の覚悟」五木寛之・著
3. オーストラリアの好きなところ:手つかずの自然がいっぱいある。抜けるような青空、雲の形が日本と明らかに違い立体的でおもしろい。人々のフレンドリーな対応。
4. 外から見た日本の印象:物質的に潤沢すぎるのか、特に若者のハングリーさがないように思う。
5. 好きな音楽:ピンク・フロイド、ラッシュなどのロックからサラ・ブライトマンなど幅広く聞く。
6. 尊敬する人:故スティーブ・ジョブス(米アップル創業者)
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:田中耕一さん、イチローさん、孫正義さん
8. 趣味:写真、自転車、アマチュア無線、乗り物系全般、ゴルフ
9. 将来の夢:この地でグライダーが操縦できるようになること。
10. カラオケの十八番:「超人バロムワン」

キヤノン・オーストラリア 中舛貴信 社長

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進出日本企業
●PROFILE
なかます・たかのぶ
キヤノン・オーストラリア社長
<略歴>
1981年、上智大学外国語学部卒。同年キヤノン入社。2009年までヨーロッパのキヤノン販売会社への赴任・駐在を複数回。09年映像事務機事業本部スモール・オフィス・システム事業部長。11年4月より現職。

進出日本企業  トップ・インタビュー
第3回

キヤノン・オーストラリア

中舛貴信 社長

 デジタル・カメラをはじめとする映像機器、プリンターや複写機といった事務機器などを手がけるキヤノン。日本を代表する大手電気機器メーカーである同社にとって、オーストラリアは製品の販売だけではなく研究開発施設も置くグローバルな拠点の1つとなっている。在豪現地法人の中舛貴信社長に話を聞いた。

(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

問題解決型ビジネスで付加価値を創造
サービス・プロバイダーへの転換図る

 

オフィスの情報管理を最適化

進出日本企業
同社のオフィス向けの主力商品であるオフィス・ネットワーク複合機「imageRUNNER ADVANCE シリーズ」

ーーひとことで言うとキヤノンとはどんな会社ですか? フィルムの時代からカメラ・メーカーとして馴染み深いですが、オフィスでも事務機器の存在感が強いですね。

キヤノンは1937年に高級カメラ・メーカーとしてスタートし、2012年には創立75周年を迎えました。カメラの印象が強いかもしれませんが、製品別の売上規模では、デジタル・カメラなどのコンシューマー(一般消費者)向け製品と、複写機に代表されるオフィス向け製品は拮抗しています。最近では、医療器機分野やシネマ用カメラなどの新規製品の拡販にも積極的に投資しています。

 
ーー豪州市場で展開する主な事業は?

 デジタル・カメラ、カメラ・レンズ、デジタル・ビデオ・カメラ、インクジェット・プリンター、インクジェット複合機、スキャナーなどのコンシューマー製品をはじめ、オフィス・ネットワーク複合機、レーザー・ビーム・プリンター、液晶プロジェクターなどのオフィス製品、放送機器、プロダクション複合機などの産業用製品まで多岐にわたっています。最近ではオフィスのドキュメント(文書)・情報管理環境を最適化して管理・運用するサービス分野にも、非常に力を入れています。

 
ーーコンシューマーとオフィスのそれぞれの市場の特徴は?

 コンシューマー製品に関して言えば、デジタル一眼レフ・カメラを例に取ると、オーストラリア人のアウトドア志向を反映してか、高画質・高品位の写真・画像を撮るための製品やサービスを重んじる傾向があります。日本では珍しくなったカメラ専売店が健在であることも、そうしたニーズを反映しているのではないでしょうか。

 オフィス製品の市場では、モバイル・ワーキングやクラウド・コンピューティングなどの新技術の導入に積極的です。そのため、従来型のビジネス・モデルに固執するのではなく、顧客のオフィス環境に応じた問題解決型、サービス提供型の「ソリューション・ビジネス」を拡大していく必要があります。顧客がそうしたアプローチに対して積極的に耳を傾けてくれるのも、豪州市場の特色です。

他社にはない強みは、画像・情報の取り込みから検索・編集を経てプリント・保存まで、つまりワーク・フローの入口から出口まで一貫して付加価値を訴求できる幅広い製品群をそろえていることだと考えています。コンシューマーとオフィスのいずれの市場においても、ハードとソフト、サービスの総合力ではどこにも負けないと自負しています。

 

進出日本企業
デジタル一眼レフ・カメラ「EOS6D」

ーー研究開発拠点のキヤノン・インフォメーション・システムズ・リサーチ・オーストラリア(CiSRA)も置いています。

CiSRAは、キヤノン本社の研究開発部門として、ソフトウエアとハードウエアの研究開発を行っており、現在200人規模の体制を敷いています。オーストラリアは、ビジネスと文化の両面で先進国であり、世界中からの移民が集まる多民族社会でもあるので、優秀な技術者を比較的容易に確保できるという利点もあります。

 
ーー豪州でも積極的にCSR(企業の社会的責任)活動を展開していますね。

コーポレート・スローガンである「共生」の理念の下で、オーストラリアでも社会貢献活動に力を入れています。環境保護活動を行う団体・研究者に、キヤノン製品を提供して活動に役立ててもらうキヤノン環境賞や、シドニー大学でマーケティングを学ぶ学生への奨学金制度、オーストラリアの写真界の発展を目的としたプロ写真家向けコンテストへの協賛などを行っています。

 

ハードの強み生かし次のステップへ

ーー目下の最大の課題は?

 我々のビジネスに関しては、完全に成熟した市場であるということです。「箱売り」に固執していては成長が止まってしまうので、ハードだけではない、市場の特色に合わせたユニークなサービスやビジネス・モデルを打ち出して行かなければなりません。

「もの造り」の観点から言うと、参入障壁が高いとされる、レンズに代表される光学技術や、技術のすり合わせなど、まだまだ優位性のある製造・製品技術を持っています。その強みをいかに守り、拡大していくかが大きなテーマではないかと思っています。

進出日本企業
プロ・ハイアマチュア写真家向けインクジェット・プリンター
「PIXMA PRO-10」

また、いわゆる「Two Speed Economy(経済の二重構造)」のマイナス要因もあります。資源産業がいくら好調でも、全就業者数に占める割合は非常に低いのが特徴です。就業者数の多い小売業や製造業はさまざまな課題に直面していて、当社の事業も直接的、間接的に影響を受けています。資源産業が近い将来、活況を享受できなくなった時、この国の発展を担う次の産業が何か? それが明確に見えてこないことに懸念を感じます。

一方、Eコマース(電子商取引)の浸透によって、オーストラリアでも流通や店舗販売のあり方が大きな転換点を迎えています。こうした急激な変化は、リスクである一方で新たなビジネス・チャンスとなる可能性も秘めています。

 
ーー現状と課題を踏まえて、将来に向けたビジョンについて聞かせてください。

 「サービス提供型企業への変貌」を加速させます。キヤノンの優れた技術を核にしたハードウェア中心のビジネス・モデルを維持しながらも、顧客の生活やビジネスに新しい付加価値を提供できる企業に変えていく。それを今後の販売・マーケティング戦略の中核に据えていきます。

<会社概要>
●英文会社名:Canon Australia Pty. Ltd.
●企業形態:キヤノンの在豪現地法人
●代表者:中舛貴信社長
●拠点:シドニー本社、メルボルン、ブリスベン、キャンベラ、アデレード、パース、ニュージーランド
●社員数:オーストラリア約800人、ニュージーランド約200人
●主な事業:キヤノン製品の販売・サービス
<沿革>
1978年、欧州、米州に次いで豪州現地法人をシドニーに設立。1990年、研究開発拠点のCiSRAをシドニーに設立。

<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:「得意淡然、失意泰然」
2. 今読んでいる本:吉村昭「三陸海岸大津波」(初版は1970年代らしいんですが、これを読むと3.11の津波が「想定外」だったなどという理屈は通用しないのがよく分かります)
3. 豪州の好きなところ:シドニーの天気。多民族国家、多国籍料理。おおむね穏やかで明るいオージー気質
4. 外から見た日本の印象:多くの方々と同じく政治のリーダーシップの不在は痛感しますが、一方きめ細かいサービス・おもてなしの心は世界一です。さらには震災の時に表れた高い道徳心、自律心も日本人の1人としてもっと自信を持ってもよいのでは、と再認識しました。
5. 好きな音楽:ジャズ、クラッシック、J-POP(要するにジャンルを問わず好きな曲は好きですね)
6. 尊敬する人:マザー・テレサ
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:織田信長、豊臣秀吉、徳川家康
8. 趣味:ゴルフ
9. 将来の夢:豪華客船で世界1周の旅に出ること、ボランティアの地域・社会貢献活動
10. カラオケの十八番:「Oh! クラウディア」(サザンオールスターズ)。古い!ってよく笑われます。

日野モーター・セールス・オーストラリア 関根健一 会長兼最高経営責任者

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進出日本企業
●PROFILE
せきね・けんいち
日野モーター・セールス・オーストラリア会長兼最高経営責任者(CEO)
<略歴>
東京外大卒業後、日野自動車工業(株)に入社。一貫して海外畑を歩み、中近東を10年、北米を15年担当したのち、海外企画部で海外全体を管轄。2009年8月より現職。海外勤務はサウジアラビア・ジェッダ(駐在事務所員、1年半)、カナダ・トロント(日野カナダ社長、5年)に次いで今回が3回目。

進出日本企業  トップ・インタビュー
第5回

日野モーター・セールス・オーストラリア

関根健一 会長兼最高経営責任者(CEO)

日本の大手トラック・メーカー、日野自動車のオーストラリア市場での販売が好調だ。2012年の販売台数は、トラック市場全体の伸びを大幅に上回る成長を記録した。日野のトラックは経済性や安全性、環境性能といった品質が高く評価されているという。在豪現地法人の関根健一・会長兼最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。

(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

豪州市場でトラック販売好調
高い環境・安全性能が原動力に

 

トヨタと提携し、商用車専業にシフト

——日野自動車は日本を代表するトラック・バスのメーカーの1つとして知られています。会社の概要と主な商品について教えてください。


ブッシュファイアの消火活動でも活躍する日野製消防車

 前身は1910年創業の東京瓦斯電気工業という会社で、戦前から複数の工場で自動車を製造していましたが、その中の日野製造所が独立して1942年に日野重工が設立されたのが、現在の日野自動車の始まりです。昨年、創立70周年を迎えました。
戦後の50年代に仏ルノー公団と技術提携し小型乗用車の生産を開始しました。当時はタクシーの多くはルノーから技術供与を受けた日野の「ルノー4CV」だったといいます。60年代にはイタリアの著名デザイナーによる「日野コンテッサ1300」が人気を集めました。ただ、66年にトヨタ自動車と業務提携したのを機に、自社ブランドの乗用車生産からは撤退しました。以来、トヨタ・ブランドの受託生産を継続しつつ、日野ブランドでは商用車の生産に専念しています。
現在の主力商品は、トラックが大型の「プロフィア」(海外名700シリーズ)、中型の「レンジャー」(同500シリーズ)、小型が「デュトロ」(同300シリーズ)の3シリーズ、各種バスなどがあります。トヨタからは4輪駆動車「ランドクルーザー・プラド」などの生産を受託しています。
日本国内の普通トラック(大型・中型)市場においては年度で39年間シェア・トップの座を確保しており、テレビCMではハイブリッド車をPRしています。またパリ・ダカの呼称で有名なダカール・ラリーでは、最近はレース自体は南米大陸で開催されていますが、今年のレースでは初参加以来22回連続完走を果たし、商用車部門の排気量10リッター未満のクラスで4年連続優勝の栄誉に輝いています。
一方、海外の市場では80カ国以上に販売・サービス網を展開しています。現在は日本からの完成車輸出よりもKD(ノックダウン生産)での輸出が主流を占め、タイや米国、インドネシアをはじめ多くの国で現地生産・組立てを行っています。オーストラリアでは現在輸入関税がほとんどないことから主に日本から完成車を輸入していますが、一部タイ生産の車型もあり、今後はタイ生産車が増えていくでしょう。

 

——どのような経緯でオーストラリア市場に進出したのですか?

当地では70年代からトヨタの代理店に日野の大型・中型のトラック販売をお願いしておりましたが、90年代から次第にトヨタは乗用車に専念し、商用車は日野に任せようという流れになってきました。そこで、94年に豪トヨタの大型・中型商用車販売部門から移管する形で、日野モーター・セールス・オーストラリアが設立されたのです。
2000年代以降は日本においてトヨタが日野への出資比率を拡大し、小型トラック生産も日野が手がけるようになりました。その結果、オーストラリア市場においても当社が小型トラックを扱うことになり「商用車の日野」のブランドが確立しました。

 

総需要は依然としてピーク時の8割

——業界団体の統計によると、2012年のオーストラリアのトラック販売台数(バン型の商用車を除く)は10.9%増加しました。金融危機後の買い控えの反動で需要は伸びているようです。

実はトラックの販売台数は2007年の約3万5,000台がピークで、金融危機後にその約7割の水準まで落ち込み、現在も依然として約8割の水準です。12年の乗用車の販売台数は約110万台と金融危機前の最高記録を更新しましたが、商用車の需要はまだそこまで回復していません。
背景には、「2スピード・エコノミー」(経済の2重構造=好調な鉱業部門と低調な製造業などそのほかの産業の格差を表現した言葉)の影の部分があると考えています。商用車は、鉱業部門の恩恵を十分に受けず、むしろ小売業や建設業の鈍化でマイナスの影響を受けています。
オーストラリアのトラック市場には日・欧・米の主要メーカーを中心に約20社が参入しており市場規模からすると過当競争になっています。最近になって韓国・中国勢も進出してきましたが当地のお客様にはまだ受け入れられていません。商品分野別の特徴を見ると、小型・中型トラックでは日野を含む日系各社で8割以上を占めています。これが大型トラックでは、長距離用途が多いことから米国や欧州のメーカーが強くなり、欧米勢が約8割、日本勢は約2割となります。

 

小型の5%はハイブリッド車に


環境に配慮した日野ハイブリッド・トラック。約2割の燃費削減が可能

——2012年のオーストラリアのメーカー別トラック販売台数を見ると、日野は4,206台と前年比で26.5%増加し、市場全体の伸びを大きく上回りました。シェアも前年の13.6%から15.5%に拡大しました。好調な販売の主な要因は何でしょうか?

日野のトラックは「QDR」(クオリティー=品質、デュラビリティー=耐久性、リライアビリティー=信頼性)の3点で高い支持を獲得しています。また環境や安全面での日野の高い技術がお客様に認められ、シェア拡大につながっています。
とりわけ10年ぶりにモデル・チェンジした小型トラックに高い評価が集まっています。ABSやエア・バッグはもちろん、制動時の車体のスピンを防ぐ制御装置「ビークル・スタビリティー・コントロール」(VSC)を搭載することで、安全性の向上を図っています。トラックは通常、エンジンの上にキャブ(運転台)がある構造ですので、どうしても乗降性や居住性が悪くなりますが、新型車では身長2メートルの運転手でも余裕を持って乗り降りでき、運転できるように改善しています。
当地は「ユーロ5」に準じた排ガス規制が採用されていますが、日野は排ガス規制対応はもちろん、ハイブリッド車の普及にも力を入れており、現在では小型トラック販売の約5%を占めています。お客様からは燃費が2割以上改善したと喜ばれています。ハイブリッド車を導入することにより環境負荷低減の取り組みを宣伝できる自治体や大手運送会社からも多くの引き合いがあります。
環境と安全を重視した車造りとダウンタイム(故障で稼働できない時間)が少なく燃費が良いという信頼性・経済性が日野の伝統でもあり日野ブランドの中核となっています。

 

新興国戦略のパイオニアになる


ダカール・ラリーのトラック部門に参戦している日野レンジャー

——日野の過去数年の実績を見ると、海外販売台数の全体に占める割合が高まっています。グローバルな企業戦略の中でオーストラリア事業をどのように位置付けていますか?

日野の国別の販売台数でオーストラリアはベスト10以内に入っており、収益性で見ると5本の指に入る重要な市場です
。 また、オーストラリアのお客様の要求水準は非常に高く、この市場で得たノウハウは、現在の新興国市場が成熟した時に必ずプラスになると考えています。新興国でもいずれ、快適性、馬力の大きいエンジン、低い環境負荷、より安全なトラックといった付加価値が求められてきます。この国でお客様のニーズをしっかり捉えていけば、日野の将来の海外事業において非常に大きな礎になるでしょう。
日本の普通トラックの年間販売台数は最盛期に約19万台ありましたが、現在ではその3分の1まで減少しています。しかしながら、オーストラリアは長期的に人口が増えていく成長市場です。トラックはモノの輸送だけではなく建設工事、消防、ゴミの回収など社会のさまざまな分野でニーズがあり、人が増えれば需要も拡大しますので、今後も安定的な伸びが見込まれるでしょう。
最大のリスク要因は為替の変動です。日本からの輸入・販売という業態は変わりませんから、円高による打撃から逃れることはできません。昨年末から円安に振れていますので現時点では追い風ですが、これから豪ドルが極端に変動しないとは誰にも断言できません。

——13年の総需要は5%程度に鈍化するとの予想も出ています。足元の動向と中長期的な戦略について聞かせてください。

今年の総需要は微増にとどまりそうですが、日野は前年比10%以上の販売拡大を目指します。小型トラックの新型車が本格的な普及期に入ります。中型も昨年から新型AMT(Automated ManualTransmission)搭載車を導入しており、今年も車種構成を増やしていきます。
トラックはサービス(点検・整備)が重要な商品です。豪州全域に60拠点のサービス網があり、必要な部品が常に入手できるようシドニー本社の部品倉庫から日々しっかりと供給しています。本社にはテクニカル・トレーニング・センターも設置しており、これを昨年さらに大きく使いやすいように大改装しました。ここで販売店やお客様のテクニシャンのトレーニングを重点的に実施しています。また年に1回は整備能力を競うコンテストを開催し、アフター・サービスの質の向上に努めています。
オーストラリアでは今後も着実に需要が拡大していく見通しです。しかしながら台数拡大だけではなく質の向上も併せて追及していきます。当社は日本の日野自動車の完全子会社ではありますが、それ以上に地元に根を下ろしたオーストラリアの企業です。トラックは「モノを動かす」「仕事をする」という社会的な役割が大きい商品ですので、先端技術を搭載した最新鋭の製品と最高のアフター・サービスをお客様に提供することを通じて、地域社会ならびに住民の皆様の生活にさらにお役に立っていきたいと考えています。

<会社概要>
●英文会社名:Hino Motor Sales Australia Pty. Ltd.
●企業形態:日野自動車(株)100%出資の在豪現地法人
●代表者:関根健一・会長兼最高経営責任者(CEO)
●拠点:本社:シドニー、事務所:メルボルン、ブリスベン
●社員数:67人(駐在員6人)
●主な事業:日野製品(トラック、バス、補給部品)の輸入・販売
<沿革>
1994年 シドニーに現地法人を設立
1995年 営業開始

<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:「幸せは自分の心の中に在る」
2. 今読んでいる本:池井戸潤・著「空飛ぶタイヤ」
3. 豪州の好きなところ:特にシドニーの美しい景色と年間を通じ住みやすい気候
4. 外から見た日本の印象:良い点はおもてなしの心と行動、残念な点は将来ビジョンを示せる政治家の不在
5. 好きな音楽:イージー・リスニング系
6. 尊敬する人:坂本竜馬
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:往年のオードリー・ヘップバーン、イングリッド・バーグマン、ジェニファー・ジョーンズ
8. 趣味:天体観測、映画鑑賞、読書、ゴルフ(時系列順)
9. 将来の夢:ゴルフのシングル・プレーヤー
10. カラオケの十八番:「新潟ブルース」

ジュリーク・インターナショナル 竹澤隆史 最高執行責任者

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進出日本企業
●PROFILE
たけざわ・たかふみ
ジュリーク・インターナショナル最高執行責任者(COO)
中央大学商学部卒。1994年ポーラ入社。国内販売企画を経て、98年海外事業部アジア代理店担当。02年ポーラUSA(ロサンゼルス)。07年仏化粧品メーカーのオルラーヌとの合弁企業「オルラーヌジャポン」代表。12年4月より現職。

進出日本企業  トップ・インタビュー
第6回

ジュリーク・インターナショナル

竹澤隆史 最高執行責任者(COO)

自然のリズムに合わせて植物の生命力を最大限に高める「バイオダイナミック農法」。ジュリークは、その理念を実践して自社農園で原料から一貫生産しているオーストラリアの自然化粧品ブランドである。同社を2012年に傘下に収めた日本の化粧品大手ポーラ・オルビスホールディングスの竹澤隆史氏(ジュリーク・インターナショナル最高執行責任者=COO)に話を聞いた。

(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

自然農法が育むプレステージ・コスメ
ポーラ・グループ海外展開の橋頭堡に

 

M&A軸にグローバル化加速

—日本の老舗化粧品メーカーであるポーラが、オーストラリアの自然化粧品メーカーであるジュリークを買収した狙いは?

 1929年創業のポーラは、訪問販売を屋台骨とする国内3位の大手化粧品メーカーです。2006年に訪問販売を主力とするポーラ、通信販売のオルビスなどの事業会社を束ねる持ち株会社ポーラ・オルビスホールディングスを設立。10年に東証1部に上場しました。現在、企業価値の拡大を図るためグローバル化を強力に推進しているところです。

ポーラ・ブランドでの海外展開は50年近く前から行ってきましたが、なかなか思うように進みませんでした。オーストラリアでも現地法人から代理店経由に移行して、細々と継続してきたという現実がありました。

そこで、上場を機に自社ブランドの海外展開からM&A(企業の合併・買収)による規模拡大へと方向性を大きく転換しました。11年7月に米国のスキンケア・ブランド「H2O+」、12年2月にジュリークをそれぞれ買収したのもその一環です。

 

—自動車や家電などの耐久消費財と違い、ライフスタイル商品は日本のものが文化や習慣が異なる海外で売れるとは限りません。そこで、良いパートナーに投資して全体の企業価値を高めるという選択肢が出てくるわけですね。では、なぜジュリークに白羽の矢を立てたのでしょう?

オーストラリアだからというわけでは必ずしもありません。1つは小粒な割にグローバル化が非常に進んでいるという点です。ジュリークは年間売上高こそ約2億豪ドルに満たないまだまだ小規模なブランドですが、オーストラリア国内売上は全体の3割にも満たず、海外比率がずっと大きいのです。日本では大手ですがグローバルな経験に乏しいポーラが最も必要とするものを、ジュリークは持っていました。

2つ目は、安全・安心で環境に優しいオーガニック化粧品という力強いコンセプトです。ジュリークは、ドイツから移住した化学者のユルゲン・クライン博士とウリイケ・クラインの夫妻が1985年に創設しました。肥沃な土壌と地中海気候に恵まれた南オーストラリア州アデレード・ヒルズで、ドイツ発祥のバイオダイナミック農法によって原料を栽培し、自然化粧品の生産を開始したのです。

創業時10エーカーだった農場は現在では155エーカーまで広がりましたが、現在でも生産方法を忠実に守り、自然由来の原料を95%以上使用しています。現場のスタッフは自然化粧品という明確なアイデンティティーに誇りに思って仕事をしています。

 

ナチュラルなバラの香りが人気

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効果の高いハーブの凝縮エキスと厳選された植物オイルがブレンドされた「ハーバル・シリーズ」

—事業の現況はいかがでしょうか?

売上高は5年連続で2ケタ成長を続けてきました。特にポーラが買収した昨年12月までの1年間は前年比20%以上の高い伸びとなり、売上高、生産数量ともに過去最高を更新しました。月間売上高も昨年12月に過去最高を記録しました。本拠地のオーストラリアのほか、米国、日本、中国、香港、英国に海外拠点を持ち、代理店販売を含め19カ国・地域に輸出しています。

主な海外市場のおおまかな売上比率は、香港を含めたグレーター・チャイナが35%、米国が約10%、日本が8〜10%といったところです。最も伸びが大きいのが中国で、12年には20店オープンして合計70店舗を営業しています。今年はさらに20〜25店舗を出店する計画です。中国人の海外旅行需要の急激な拡大を背景に、世界中の免税店での販売も拡大しています。

オーストラリア国内も好調です。化粧品の市場規模が15億豪ドルほどしかない中で、百貨店の販路のプレステージ商品はそのうちざっと5億豪ドル。その百貨店の中でもスキンケア市場だけを見ると、ジュリークはフランスのクラランスに次いで2位に付けています。2大百貨店ではほぼ全店舗で取り扱っていますし、直営コンセプト・ストアも全国に20店あります。代表的なオーストラリア製品としてプレゼンスが高まっています。

 

—日本の消費者にはどのように受け入れられているのでしょうか?

日本でもオーストラリアの有名ブランドとして知られています。ジュリークと言えばローズのイメージが強いですね。ナチュラルなバラの香りを持つコスメはジュリークの看板商品です。ローズのハンドクリームや化粧水が好評を得ています。日本市場で需要が大きいクレンジング(化粧落とし)も、ローズの香りがする商品として人気があります。

 

グループ化によるシナジー効果に期待

進出日本企業
バイオダイナミック農法によってバラなどの原料を栽培するアデレード・ヒルズの自社農場

—買収からまだ1年あまりですが、現時点では狙い通り順調に推移しているようですね。ジュリーク事業の目下の課題と将来に向けたビジョンを聞かせてください。

今後、世界的にメジャーな化粧品ブランドに育てていくには、オーストラリア発のコンセプトだけではなく、いかにそれぞれの市場に合わせた戦略を進めるかが課題となります。現在、アジア市場向けの商品開発をスタートしていますが、そこはまさにグループ化によるシナジー(相乗効果)が生かせるポイントです。世界的に高い評価を受けているポーラの研究開発力はジュリークのさらなる成長につながるでしょう。

一方、ジュリークはポーラ・グループの中で最もグローバル化が進んだ事業会社です。近い将来、年間売上高約2. 5億豪ドル、グループ全体のシェア10%以上を実現するのが目下の目標です。ジュリークを橋頭堡として、ポーラ・グループ全体のグローバル展開につなげていきます。

ジュリークでは、89%の廃棄物を再使用、または再利用し、昨年だけで2,000本のオーストラリア原産の木を植樹して温室効果ガスの排出量を大幅に削減するなど、環境保全の社会貢献(CSR)はブランドのアイデンティティーの1つです。こうした取り組みについても、グループに積極的にアピールしていきます。

 

<会社概要>
●英文会社名:Jurlique International Pty. Ltd.
●企業形態:ポーラ・オービスホールディングスが100%出資する子会社
●代表者:竹澤隆史・最高執行責任者(COO)
●拠点:アデレード(本社)、シドニー(販売拠点)、米国、日本、中国、香港、英国
●従業員数:約800人(販売員、海外拠点を含む)
●主な事業:バイオダイナミック農法で生産した原料を使用したスキンケア商品の生産・販売
<沿革>
1985年、ドイツから移民した化学者ユルゲン・クライン博士夫妻がSA州アデレード・ヒルズで創業。
2012年、日本の化粧品大手ポーラ・オルビスホールディングスが買収。
 
 
<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:「有言実行」
2. 今読んでいる本:「海賊と呼ばれた男」(百田尚樹著)
3. 豪州の好きなところ:緑豊かな大自然と恵まれた気候、ワークライフ・バランスの充実、花粉症にあまり悩まされないところ
4. 外から見た日本の印象:世界でも十分にやっていける実力があるのに、負け癖が付いてしまっていて内向きになっている。
5. 好きな音楽:80〜90年代の洋楽ロック・ポップス
6. 尊敬する人:稲森和夫(京セラ創業者)
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:盛田昭夫(ソニー創業者の1人)、本田宗一郎(ホンダ創業者)、稲森和夫
8. 趣味:テニス、ゴルフ、ジョギング(体を動かすこと)などスポーツ全般
9. 将来の夢:ハワイで畑を耕して自給自足のゆっくりとした生活ができたら…
10. カラオケの十八番:沢田研二やクイーンのヒット曲

日立オーストラリア社長 石原均 取締役社長

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進出日本企業
●PROFILE
いしはら・ひとし
日立オーストラリア取締役社長
<略歴>
早稲田大学卒業後、日立製作所入社。海外事業に従事し、電力などのプラント案件から産業機器などのコンポーネント・ビジネスに携わる。1990年から4年間、日立カナダ(カルガリー)2001年から6年間、日立アジア(シンガポール)に勤務、10年に日立オーストラリア社長に就任、現在に至る。

進出日本企業  トップ・インタビュー
第7回

日立オーストラリア

石原 均 取締役社長

 日本を代表する総合電機メーカーの1つである日立製作所は、これまで約半世紀にわたってオーストラリアのインフラ整備に貢献してきた。現在では資源産業向けの輸送機械、発電用タービン、鉄道のモーター、データ・ストレージなど多様な事業を展開している。在豪現地法人の石原均・取締役社長に話を聞いた。

(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

「B to B」から「B to S」へ
インフラ整備で豪州社会に貢献

 

インフラを中核事業に


豪州各地の鉱山で活躍する日立製の超大型油圧ショベルとダンプトラック

——日立製作所と言えば、以前はテレビなど消費者向け家電製品のブランドとして親しまれていましたが、現在ではインフラを中心とした法人向け事業に注力していますね。

源流は1910年に発足した日立鉱山のモーター修理工場です。当時の日本は産業機械を輸入していて、外国製モーターの修理事業からスタートしました。その技術を生かして、後に変圧器や交流電流計、電圧計、水力発電用の水車、扇風機などの国産化に成功しました。2 0 年に日立製作所を設立し、国産初の電気機関車(24年)をはじめエレベーター(32年)、交流発電機(43年)などを世に送り出しました。 

戦後は扇風機や洗濯機といった家電製品へと事業領域を拡大しました。テレビなどのエレクトロニクス製品、パソコンなどの情報通信機器の生産も手がけるようになりました。ところが、経営環境が厳しさを増したため、2009年に大がかりな構造改革を断行してビジネス・モデルを変革しました。中核事業を電力や交通等のインフラ整備などとし、現在では業績はV字回復を果たしています。

 

インフラ事業は以前から日立が得意とする分野であり、創業当時の原点に立ち返った形とも言えるでしょう。

 

エレクトロニクスから鉱山トラックまで

——オーストラリアでも長年にわたり資源産業や交通などの分野でインフラ事業に取り組んできました。現地法人の主力事業にはどのようなものがありますか?

日立のオーストラリア事業は約50年の歴史があります。1964年にWA州の鉄鉱石積み出し港の整備に携わったのを皮切りに、VIC州の鉄道、QLD州の石炭火力発電所をはじめ全国でさまざまな社会基盤整備に参画してきました。 

最近の身近な例では、NSW州立鉄道シティレールの新型車両「ワラタ」のモーターとインバーター(直流電力を交流電力に変換する装置)を手がけています。 

現在の主な事業分野としては、鉱山・建設機械、電力、IT、鉄道、産業用機械、物流、業務用エレクトロニクスなどがあります。火力発電用のタービンやボイラー、鉄道、法人向けの電気機械などを扱う日立オーストラリア(シドニー)を中心に、オセアニア地域で合計8つのグループ会社(オーストラリア7社、ニュージーランド1社)を運営しています。 

ほかの主なグループ会社としては、鉱山用の輸送機械や建設機械を扱う日立建機オーストラリア(シドニー)、データ・ストレージ事業を行う日立データシステムズ・オーストラリア(シドニー)、電動工具などを扱う日立工機オーストラリア(シドニー)、カー・オーディオのクラリオン・オーストラリア(メルボルン)、物流の日立トランスポート・システム・オーストラリア(メルボルン)などがあります。 

オセアニア事業全体で約17億豪ドルの連結売上高(2012年3月期)があり、1,900人の従業員を雇用しています。

 

イノベーションで社会の課題に応える




オーストラリアの建築現場や家庭で活躍している日立の電動工具

——グループ全体のグローバル戦略では、オーストラリア事業をどのように位置付けているのですか ? また、オーストラリア市場における日立の強みは何ですか ?

日立が5月16日に発表した「2015中期経営計画」では、15年度の海外売上高比率を現在の41%から50超に引き上げるとの目標を掲げています。売上高比率の目標を各地域で見ると、オーストラリアを含むアジア・オセアニア(中国を除く)を16%から20%に引き上げることを目指しています。国・地域別で最大の増加率(25%)を見込んでいて、この地域を最も成長が期待できる市場ととらえているわけです。

 

日立は「B to S」(ビジネス・トゥ・ソサエティー=企業対社会)という新しいビジョンを打ち出しています。お客様は消費者(コンシューマー=C)でも企業(ビジネス=B)でもなく社会(ソサエティー=S)であるという発想です。社会が抱える課題に技術革新で応える「社会イノベーション事業」をグローバルに提供することを成長戦略の中核に位置付けています。 

オーストラリアも社会イノベーション事業を展開する重要拠点の1つととらえています。小さな電気製品から巨大な鉱山用トラックまで幅広い事業を展開していることから、各部門の間で技術を共有できるためシナジー効果を発揮することができます。それが、他社にはない日立の最大の強みとなっています。

 
——オーストラリア事業の将来に向けた成長戦略についてお聞かせください。

この国は今後も規模の拡大が見込める有望な市場です。しかし、生産性の向上を図るには、経済成長をけん引してきた資源・エネルギー部門のインフラだけではなく、人口増加に伴う都市基盤の整備も課題です。慢性化する混雑を解消するには、鉄道など交通インフラの拡充が重要になってくるでしょう。 

例えば4月に最終報告書が発表された東海岸の高速鉄道構想。もしこれが実現すれば、日立も日本の高度な新幹線技術を提供できる可能性があります。インフラというのは完成まで数十年を要することもある息の長いビジネスです。明日結果が出るというものではありませんが、社会=お客様の課題にソリューション(解決策)を提供することで、オーストラリアの持続的な発展に永く貢献していきたいと考えています。

<会社概要>
●英文会社名:Hitachi Australia Pty Ltd
●企業形態:日立製作所が100%出資する子会社
●代表者:石原均・取締役社長
●拠点:シドニー北部ノース・ライド
●従業員数:約1,900人(オセアニア地域のグループ会社を含む)
●主な事業:鉱山・建設機械、電力、IT、鉄道、産業用機械、エレクトロニクスなど(オセアニア地域のグループ会社を含む)
<沿革>
1966年 シドニーに駐在事務所新設
1968年 オーストラリア事務所設立
1983年 日立オーストラリア設立
 
 
<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:温故知新
2. 今読んでいる本:『海賊と呼ばれた男』(百田尚樹)
3. 豪州の好きなところ:治安が良く、衛生面で清潔であること
4. 外から見た日本の印象:まわりのことに気を配り、控えめなところが美しい。一方、世界の中で生き抜くには弱い
5. 好きな音楽:モータウン・サウンド
6. 尊敬する人:出光佐三
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:オードリー・ヘップバーン、ジュリー・アンドリュース、吉永小百合
8. 趣味:ゴルフ
9. 将来の夢:好々爺
10. カラオケの十八番:郷ひろみ「言えないよ」

【インタビュー】丸紅オーストラリア会社社長─梶谷誠氏

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進出日本企業
PROFILE ● かじたに・まこと 丸紅オーストラリア社長
<略歴>京都大学理学部(地質学)1980年卒業後、丸紅入社。軽金属部で主にアルミ事業に携わる。1989年〜95年丸紅ベネズエラ会社勤務。軽金属部長、金属資源部門長代行を経て2011年より現職

進出日本企業  トップ・インタビュー
第8回

丸紅オーストラリア会社

梶谷誠 社長

日本の大手総合商社の一角を占める丸紅。そのオーストラリア事業は石炭や鉄鉱石、小麦、畜産物といった一次産品から発電や送電、鉄道などのインフラに至るまで非常に幅広い。丸紅オーストラリア会社の梶谷誠社長に事業の現況と展望について聞いた。

(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

「市場としてのポテンシャルにも着目
資源権益とインフラへの投資に注力

 

——まずは丸紅グループ全体の概要について教えてください。

初代・伊藤忠兵衛が1858年、近江の国(現在の滋賀県)で麻布の出張卸売業を始めたのが原点です。後に伊藤忠商店と丸紅商店などに分かれますが、1940年代にいったん合併、終戦直後の49年に再び分割されます。高度経済成長期には主力事業の軸足を繊維から重工業製品へと移し、72年に現在の形態となっています。「商社冬の時代」と呼ばれた低迷期を経て、2000年代以降はV字回復を達成しました。13年3月期の純利益は前年度比19.5%増の2,056億9,600万円と過去最高を更新するなど、直近の業績も好調に推移しています。今年は米穀物大手ガビロンを買収して世界的な「穀物メジャー」の仲間入りを果たします。対日輸出も予定されている米国のシェール・ガス権益に投資するなど成長分野への投資を加速させています。

 

石炭を主力に電力・鉄道にも強み、今後鉄鋼石も


風力発電事業(SA州)
 

ゴールドコースト市の路面電車PPP事業(QLD州)
 

石炭採掘事業(QLD州)

——日本にとってオーストラリアは、鉱物や食糧などの資源供給先としてきわめて重要です。丸紅の主なオーストラリア事業にはどのようなものがありますか?

オーストラリアに進出した1954年当時は羊毛の対日輸出が中心でした。その後は重工業製品や鉄鉱石、石炭、製紙原料のウッドチップ、穀物、牛肉の対日輸出など事業の領域を拡大していきました。近年は、資源投資の比重が高まるとともにその周辺事業を拡大させつつ、インフラ事業の重要性も増しています。

資源関連では、QLD州レイク・バーモント炭鉱など10カ所の石炭事業に出資しているほか、国内有数の鉄鉱石開発事業であるWA州ピルバラ地区の「ロイ・ヒル」プロジェクトに参画(12.5%)しています。アルミニウム製錬事業も合弁で手がけています。

食糧の主力事業としては、豪州産小麦などの穀物の輸出や、NSW州北部レンジャーズ・バレーにある3万頭規模のフィードロット(肉牛肥育場)などがあります。植林事業への出資や製紙原料ウッドチップの輸出、WA州ダンピアの製塩事業への参画、化学品や太陽光発電パネルの輸入なども行っています。

インフラ事業では、石炭火力やガス火力、風力などの発電事業で豊富な実績があります。NSW州とQLD州間とVIC州・SA州間の送電網や、WA州と北部準州内の天然ガス・パイプラインも所有しており、QLD州内のガス配送事業にも参画しています。

鉄道も積極的に推進している分野の1つです。現地事業会社を通して機関車・貨車のリース事業に参画しているほか、ゴールドコーストでは官民パートナーシップ(PPP)のトラム(路面電車)建設・運営を日本企業として初めて受注しました。このほか、海水淡水化の技術を持つ現地企業への出資、日立建機の鉱山用車両の輸入販売、シドニー北部のアーターモンとホーンズビーにあるホンダの自動車販売店の経営なども手がけています。

 

競争力高い権益の長期保有に価値

————オーストラリア事業での丸紅の強みは何でしょうか?

商品価格に左右されやすい資源部門への依存度が相対的に低く、バランスが取れていることがあります。世界的に丸紅のインフラ事業の競争力は高く、オーストラリア国内の電力事業の持ち分発電量も563メガワットと日本の総合商社の中ではトップです。

オーストラリアは資源だけではなく、建設機械や貨車のリース、水事業といった資源の周辺事業、電力などのインフラ事業も含めて、総合的に取り組むことが可能です。PPP事業も有望です。PPPは政府部門と企業が責任を分担する制度ですから、低コストだけでは勝負できません。当社とパートナーの契約履行能力や信頼性の高さが強みになっています。

一方、商品価格の下落を背景に資源ブームの終えんを指摘する声もありますが、長い目で見ると競争力の高い鉱山を保有し続けることは価値があると考えています。需要は中国の景気をはじめコントロール不可能な外的要因に左右されます。しかし、世界的に見てオーストラリアは資源が偏在している国の1つであり、中国に足りない鉄鉱石と原料炭を豊富に埋蔵しているので恵まれています。

 

穀物大手買収でシナジー効果に期待

——将来に向けたオーストラリア事業の課題と展望を聞かせてください。

まず当面はロイ・ヒルの操業開始(2015年)に向けて作業を着々と進めていきます。小麦を主力とする穀物事業では、ガビロン買収のシナジー効果を出していきたいですね。ガビロンはオーストラリアから年間約200万トンの穀物を輸出しており、丸紅の従来の取り扱い分と合わせて規模のメリットを享受できます。インフラ関係ではこれまでの実績を生かし、鉄道や道路などの案件を積極的に受注していきたいと思います。

中長期的には、現時点のポートフォリオにはない石油・天然ガスの権益に参画することが課題です。食糧関連では、同じく空白になっている酪農事業への参入も果たしたいと考えています。これらを手にできれば、豪州産商品のメニューがひと通り全部そろうことになります。

また、今後は市場としての価値にも注目したいと思います。オーストラリアは1人当たり国内総生産(GDP)が主要国中トップ・クラスという高い購買力に加え、継続的な人口増加が見込まれる成長市場です。近年は住宅や化粧品、飲料、保険など生活関連産業の日本企業の進出例も増えています。商社も資源供給だけにとどまらず、消費市場としてのオーストラリアにもっと目を向けていきたいですね。

<会社概要>
●企業形態:丸紅が100%出資する子会社
●代表者:梶谷誠社長
●拠点:シドニー、メルボルン、パース
●従業員数:52人
●主な事業:鉄鉱石・アルミ・食肉・小麦・チップなどの輸出、建設機械・産業機械・化学品などの輸入、および3国間貿易、豪州内関係会社への投融資

<沿革>
1954年 シドニーに駐在員事務所開設
1960年 丸紅オーストラリア会社設立
 


 
<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:臥薪嘗胆
2. 今読んでいる本:「重力とは何か」(大栗博司)、「戦後史の正体」(孫崎享)、「イギリス産業革命と近代地質学の成立」(小林英夫)
3. 豪州の好きなところ:身の危険を感じないところ。フレンドリーな国民性
4. 外から見た日本の印象:豪州における日本の地位が以前より低下しているのが残念
5. 好きな音楽:キャロル、中島みゆき、ユーミン、AKB48
6. 尊敬する人:湯川秀樹
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:特になし
8. 趣味:将棋(3段)、水泳、サッカー観戦、三国志
9. 将来の夢:マイアミで老後生活
10. カラオケの十八番:タイガー&ドラゴン(クレイジーケンバンド)

オーストラリア日本ハム、澤田茂社長インタビュー

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進出日本企業
PROFILE ● さわだ・しげる
オーストラリア日本ハム取締役社長
<略歴>神戸大学農学部卒業後、日本ハム株式会社入社。ハムソーセージ製造・食肉処理業務の研修を経て、輸入牛肉の仕入販売に従事し、米国・豪州・カナダ・NZなどからの買い付け業務に携わる。2010年からオーストラリア日本ハムで勤務。2012年にオーストラリア日本ハム社長に就任。現在に至る。

進出日本企業  トップ・インタビュー
第9回

オーストラリア日本ハム

澤田 茂 取締役社長

日本の食肉卸売・食肉加工食品製造最大手、日本ハム(本社大阪市)は、サプライ・チェーン全体をグループ内で運営する一貫体制が強みだ。オーストラリアでも肉牛の肥育から処理、卸売までを一手に手がけ、海外へ輸出しているほか国内の大手スーパーにも供給している。現地法人の澤田茂・取締役社長にオーストラリア事業の戦略について聞いた。

(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

牛肉供給のグローバル拠点に
生産から輸出まで一貫体制

 

—まず日本ハムという企業の概要について教えてください。

1942年創業の「徳島食肉加工場」(51年に徳島ハム(株)に組織変更)が前身です。63年に鳥清ハムと合併し現在の日本ハムが発足しました。創業事業であるハム・ソーセージ事業に始まり、食肉と加工食品、水産、乳製品、コラーゲンなど、食の新たな可能性に挑戦し、食の事業領域を拡大してきました。日本の食肉業界で唯一、牛・豚・鶏の3畜種で生産から販売までを統合したシステムを保有しているのが特徴です。「たんぱく質ベースのグローバル多角化企業」を目指しています。

2013年3月期のグループ全体の売上高1兆228億円のうち約6割を占める食肉事業はコア・ビジネスの1つです。生産から販売まで一貫してグループ内で手がける体制が最大の強みです。ブランド食肉をはじめとして大手量販店などに卸売しています。

全体の約3割を占める加工事業においても、ハム・ソーセージや加工品などの商品開発から製造、販売までを手がけています。ウィンナー・ソーセージの「シャウエッセン」やチルド・ピザの「石窯工房」などのブランドで親しまれています。水産品や乳製品(チーズ、ヨーグルト)、フリーズ・ドライ食品、健康食品などの関連事業(全体の12%)も幅広く展開しています。

 

輸出先は日本から世界に軸足

—日本ハム・グループにとってオーストラリアは牛肉生産の重要拠点ですね。日本市場でオーストラリア産牛肉が一般的ではなかった1978年に現地法人をシドニーに設立した狙いは?

70年代の日本では牛肉はまだ自由化されていませんでした。しかし、将来の自由化に向けた対応と海外市場での内販も視野に入れて、海外進出を模索しました。米国(77年)に続いてオーストラリアにも78年に現地法人を設立しました。


QLD 州・NSW州に日本ハムが所有する肉牛飼育牧場

80年代の半ばになると牛肉自由化(91年実施)がいよいよクローズアップされてきましたので、これに備えてオーストラリアでの生産体制の構築を加速しました。87年に食肉を処理する「オーキー・アバトゥア」(QLD州南部オーキー)、88年にフィードロット(肥育場=出荷前に一定の期間、穀物を食べさせて品質を整える施設)の「ワイアラ牧場」(同州南部テキサス)を相次いで買収しました。川上の肥育から処理、川下の販売、輸出までサプライ・チェーンを通した一貫体制を整えました。

 

—オーストラリア事業の現況はいかがですか?


全国のコールズやウールワースでも日本ハムが出荷する牛肉が販売されている
 

QLD州OAKEY市にある衛生管理の行き届いたOAKEY ABATTOIR社の処理工場
 

日本ハムが所有するQLD州TEXASにある穀物肥育専用のWHYALLA牧場

現在では、海外市場への輸出を主に手がけるオーストラリア日本ハム(シドニー)を中心に、最大7万5,000頭の肉牛を収容できるフィードロットを運営するオーキー・ホールディングス、オーキー・アバトゥアなど合計6つの子会社をオーストラリア国内で運営しています。

主力事業は全体のおよそ70%を占める輸出です。看板商品はオーストラリア産の大麦飼料を食べさせた「大麦牛」。以前は対日輸出が大半を占めていましたが、近年はほかの国・地域向けの割合が拡大しています。主な輸出先別の割合は、日本約26%、米国約15%、韓国約11%、台湾約6%といったところですが、ここ数年は中国向けが急増しています。

売り上げの30%はオーストラリア国内市場での販売です。2大スーパーのコールズとウールワースをはじめ、卸売大手メットキャッシュ、米系小売チェーンのコストコなどに販売しています。国内の牛肉生産規模では3番手で、約9%のシェアを獲得しています。日本ハムのブランドとしてではなく各グループ工場のブランドで供給しています。そのためパッケージの表示を見ても分かりませんが、オーストラリア在住の皆さんにも知らないうちに当社の牛肉を食べていただいているかもしれません。

このほか、石けんなどに利用される牛脂、外食産業向けの調味料などに使われる牛骨のエキス、牛皮など、食肉の副産物として生産されるさまざまな副産物も手がけています。

 

豪州から海外見本市に出展

—オーストラリア事業の課題と今後のビジョンについて聞かせてください。

輸出事業にとっては不安定な為替相場が最大のリスク要因です。このところ豪ドルが対米ドルで下げに転じていますのでなんとか持ち直しましたが、1豪ドル=1.05米ドルに達した時は非常に苦しい思いをしました。他国と比較して賃金水準や労災リスクもマイナス要因です。干ばつや洪水といった気候要因にも収益は大きく左右されます。

国内市場では現在、自前ブランドはそれほど展開していませんが、今後は付加価値の高い自社牧場ブランドの投入を目指しています。現状では牛肉の販売に偏重しているので、牛脂や牛骨エキスなどの副産物の割合も増やしていきたいですね。

最大の目標は、世界により多くのお客さんを増やしていくことです。最近では「豪州WAGYU」(日本の和牛をルーツに持つ交雑種)の生産をスタートしました。これまでオーストラリアでは従来種を生産してきましたが、これからは単価の高い豪州WAGYUの生産から販売までを手がけることで売上高の一層の拡大を図っていきます。肉牛は繁殖から出荷まで何年もかかりますので明日結果が出るものではありませんが、息の長い事業に育てていきます。

日本ハムグループでは、海外売上高をこれまで以上に増やしていく方針を掲げています。オーストラリア事業はグループ連結決算ベースで約5億豪ドル(2014年3月期)の売り上げがあり、グループの海外戦略において重要な責務を担っています。オーストラリア日本ハムとして、世界各地の食品見本市に積極的に出展しており、今年11月には上海の見本市で売り込みをかけます。

新興国の経済発展に伴う食生活の向上を背景に、地球上の牛肉消費は今後も順調に伸びていくと予想されます。オーストラリアから輸出を伸ばして世界の成長を取り込むことで、グループ全体のグローバル化をけん引していきたいと考えています。

<会社概要>
●英文会社名:Nippon Meat Packers Australia
●企業形態:日本ハムの現地法人
●代表者:澤田茂・取締役社長
●拠点:シドニー
●従業員数:約1,650人
●主な事業:牛肉の生産・販売
<沿革>
1978年 シドニーに現地法人設立  
1987年 現地の食肉処理会社オーキーアバトゥア買収
1988年 QLD州のワイアラ牧場を買収、生産から販売まで一貫体制を構築
1990年 QLD州のT.B.S(トーマス・ボースウィック&サンズ)に出資
1994年 NSW州ウィンガムビーフエキスポートを設立
1997年 豪州国内の販社であるビーフ・プロデューサーズ・オーストラリアを設立
日本向けブランド牛肉「大麦牛」の本格的販売を始める

 


 
<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:Nothing venture, nothing have(思い切ってやってみなければ何も得られない)
2. 今読んでいる本:現在は特に読んでいる本はない。仕事にまつわる情報誌に目を通しています。
3. 豪州の好きなところ:雄大な自然と美味いワイン
4. 外から見た日本の印象:四季折々の季節感が素晴らしい。物価も安い
5. 好きな音楽:ハーモニーが綺麗な曲であれば何でも
6. 尊敬する人:どんな職場でも努力を続けている人はすべて尊敬します
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:楊貴妃、小野小町、クレオパトラ
8. 趣味またはスポーツ:料理、ゴルフ
9. 将来の夢:食育に関することに従事したい
10. カラオケの十八番:「千の風になって」

 


損保ジャパン・オーストラリア、畑中大右氏インタビュー

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進出日本企業  トップ・インタビュー
第10回

損害保険ジャパン オーストラリア支店
日本興亜損害保険 オーストラリア支店

畑中大右 首席駐在員

損保大手の損保ジャパンと日本興亜損保は2014年9月に合併し、損保ジャパン日本興亜として新たにスタートする予定だ。オーストラリアでは既に今年4月、両社の支店が共同でオペレーションを開始している。オーストラリア事業の現状と今後の戦略などについて、拠点長である畑中大右首席駐在員に聞いた。(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

●PROFILE
はたなか・だいすけ
オーストラリア支店首席駐在員
<略歴>1995年に関西学院大学(法学部)卒業後、同年に旧日本火災入社。2002年4月より本社企業商品部で商品開発、保険引受業務を担当。07年4月より本店企業営業部で総合電気メーカーを担当。11年4月よりシドニー駐在。13年10月より損害保険ジャパン社の拠点長を兼務(現職)

 

合併効果を最大限に生かしたい
グローバル企業の開拓も視野に

 

—始めに両社の概要と事業合併の狙いについて聞かせてください。

現在の「損保ジャパン」は「安田火災海上」「日産火災海上」「大成火災海上」が02年に合併し、「日本興亜損保」は、「日本火災海上」と「興亜火災海上」が01年に合併して誕生しました。損保ジャパンの源流企業であり日本で初めて火災保険を販売した「東京火災」の創業(1887年)から数えて、126年の歴史があります。両社とも日本国内の損害保険のほか海外の保険事業も手がけています。


NKSJグループの事業展開

10年には両社で共同で持ち株会社「NKSJホールディングス」を設立しました。その後も損保ジャパンと日本興亜損保は別々のブランドとして事業を展開してきましたが、14年9月に合併し、「損保ジャパン日本興亜」が発足する予定です(金融庁の認可が前提)。

合併後は国内で最大の損害保険会社(12年度の両社の正味収入保険料ベース)となる見通しで、規模のメリットが格段に向上しています。収入保険料が増加する一方で事業費を圧縮できるため業界トップ・レベルの収益性を見込むことが可能となります。サービス面でもそれぞれの強みを生かしたシナジー効果が期待できます。

そうした動きの背景には、日本の損保業界の厳しい現状があります。業界は現在、少子高齢化と人口の減少による市場の縮小という構造的な問題に直面しています。中でも収入保険料のおよそ半分を占める自動車保険事業は、人口減少に加えて若者の車離れや車両の小型化、高齢者による事故件数の増加など厳しい環境にあります。近年は地震をはじめ台風や洪水、いわゆる「ゲリラ豪雨」など自然災害が大規模化する傾向にあることも逆風です。

このため、成長が見込める新興国などへの海外事業展開は急務です。合併により国内で最大手(12年度の両社の正味収入保険料ベース)となることで、質と規模の両面でグローバル市場で外資の大手損保と渡り合える会社を目指します。

 

アリアンツ(独資本)との提携が強みに

—損保ジャパンおよび日本興亜損保としてのオーストラリア事業について詳しく教えてください。

日本興亜損保は日本の損保業界では最も古い歴史があり、1962年にシドニーに支店を開設しました。当時は57年の日豪通商協定締結を受けて、日系企業のオーストラリア進出が相次いでいた時期でした。既に日本の商社や船会社、メーカーなど40社以上が拠点を置いていて、当社も顧客の要請を受けて進出に踏み切りました。

以来、51年間にわたり、主に進出日系企業の顧客を対象に、火災保険や自動車保険、損害賠償責任保険、貨物海上保険などを提供しています。日系企業向けに防災に関するアドバイスも行っています。

当社のオーストラリア事業は現地法人ではなく、オーストラリア金融規制局(APRA)から免許を取得した支店という形です。売上・収益は日本国内の損保事業として計上しています。アジアなど新興国の海外事業はエージェント(代理店)を介した、または直接販売による個人契約のリテール(小売)が中心ですが、オーストラリアではほかの欧米諸国と同様にブローカー(代理人)を介した市場となっています。そうしたことから、オーストラリアでの業務はほかの欧米諸国での事業と同様、進出日系企業向けの保険サービスが中心となっているのが現状です。

10年4月には現地の業務提携先を損保ジャパンのオーストラリア支店と関係が深いアリアンツ・オーストラリア(ドイツ拠点の世界最大手の保険会社アリアンツの在豪現地法人)に集約しました。12年11月には事務所も共同化しました。今年4月には、本社の合併に先駆けて、両社が共同でオペレーションを開始しています。

現代の保険事業はITシステムを基盤とした装置産業と言えます。現在の規模ですべてのファシリティー(施設・設備)を自社で運営するとどうしても事業費が高くなります。その点、当支店は事務所、ITシステム、従業員を業務提携先である豪州国内第3位のアリアンツ・オーストラリアから提供を受けているため、アリアンツと同等の質の高いサービスをロー・コストで実現できるのが大きな強みです。

 

合併によるコスト削減効果を生かす

—オーストラリアで事業の目下の課題と今後の展望について聞かせてください。

洪水やサイクロン、山火事など、広範囲にわたる自然災害が頻発する市場であることから、地域ごとのリスク情報を集積して管理することが重要です。また、人件費などのコストが上昇しているため、資源関連など特定の業種を除いて特に製造業を取り巻く環境は厳しさを増しています。当社においても人件費などの固定費が継続的に上昇していくことが予想されますので、現在の保険料水準を維持するには固定費をいっそう削減していく取り組みが不可欠です。両社の合併による事業費削減効果を最大限に生かして、今後も日系企業の顧客向けに高品質なサービスを提供していきたいと思います。

アリアンツとの良好な提携関係は今後も維持し、ロー・コスト運営を継続していきます。それとともに、アリアンツの当社専任スタッフへの教育を強化してサービス水準の向上を図り、日系企業ならではのきめの細かいサービスを提供していきます。

今後は、日系企業向けの企業契約以外にも新たな顧客層を開拓していく必要があります。アリアンツは、アリアンツ・オーストラリアのほかにグローバル企業を対象としたドイツ本社直轄の別会社も置いています。このグローバル部門との連携を軸に、欧米系多国籍企業の需要も取り込んでいきたいと考えています。

<会社概要>
●英文会社名: Sompo Japan Insurance Inc.
NIPPONKOA Insurance Company, Limited.
●企業形態:損保ジャパンおよび日本興亜損保のオーストラリア支店
●代表者:畑中大右首席駐在員
●拠点:シドニー
●従業員数:日本からの駐在員2人、アリアンツから支店への派遣社員13人(合併後)
●主な事業:主に日系企業を対象とした法人向け保険サービスの提供
<沿革>
1962年: 日本興亜損保がシドニーにオーストラリア支店を開設
1970年: 損保ジャパンがアリアンツ・オーストラリアの前身企業であるMMI社と業務提携
2012年: 損保ジャパンと日本興亜損保の共同事務所化
2013年: 損保ジャパンと日本興亜損保の共同運営開始

<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:「努力なくして得るものなし」
2. 今読んでいる本:「ロスジェネの逆襲」(池井戸潤・著)
3. 豪州の好きなところ:突き抜けるような青空、過ごしやすい気候
4. 外から見た日本の印象:豊かなはずなのに閉塞感がある
5. 好きな音楽:流行の洋楽(ポップス)をよく聴きます。
6. 尊敬する人:本田宗一郎
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:決め切れません…
8. 趣味:ジョギング、ゴルフ、スポーツ観戦(サッカー)
9. 将来の夢:世界遺産の古城めぐり
10. カラオケの十八番:「キセキ」(GReeeeN)

豪の安全を守る「セコム・オーストラリア」

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進出日本企業  トップ・インタビュー
第11回

セコム・オーストラリア

山下卓也 代表取締役社長

昨年創業50周年を迎えた日本最大の警備保障会社セコム。早くから警備の機械化に成功し、現在ではセキュリティー事業を中核に防災や医療、地理情報サービスなど様々な「安全・安心」のソリューションを提供している。在豪現地法人セコム・オーストラリアの事業戦略について、山下卓也・代表取締役社長に聞いた。(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

●PROFILE
やました・たくや
セコム・オーストラリア代表取締役社長
<略歴>1990年青山学院大学経営学部卒業後、同年セコム(株)入社。現場や本社勤務を経て、社内制度で米国留学。2001年から6年間飯田・戸田両セコム創業者(取締役最高顧問)の秘書を務める。その後セコムグループの(株)パスコへ出向し、経営管理部長を経て国際事業部門の責任者を務め、2013年5月よりセコムオーストラリア代表取締役社長就任(現職)

 

豪州にも安全・安心を提供する
国防省から受注、高い信頼獲得

 

——最初にセコムとはどんな会社なのか教えてください。

創業者はともに取締役最高顧問を務める飯田亮と戸田壽一です。飯田が働いていた実家の酒問屋に戸田が訪ねてきては、「日本で誰もやったことのない事業を始めたい」と夢を熱く語っていたそうです。通信販売などさまざまなアイデアの中から最終的に「日本初の警備保障会社」に的を絞りました。

当時の日本では社会の安全を守るのはすべて警察の役割。警備サービスを提供する民間企業が存在しなかったので「これは行ける」と考え、欧州発祥の警備業を研究しました。日本でのビジネス・モデルを一から作り、1962年に「日本警備保障」を起業しました。

当時の警備は社員や職員が宿直などで行うのが一般的で、当初は事業を軌道に乗せるのに相当苦労したと聞いています。転機は64年の東京五輪開催でした。選手村の警備を無事やり遂げ、警備という仕事が社会に認められました。当社をモデルにしたテレビ・ドラマ「ザ・ガードマン」(65年〜71年)が大ヒットしたことも認知度の向上につながりました。ちなみに、ガードマンという和製英語はこのドラマが語源となっています。

早い時期から機械化を推進したことも追い風を吹かせました。66年に日本初のオンライン・セキュリティー・システム「SPアラーム」を導入しました。飯田が「機械にできることは機械にやらせ、人間は判断力や機動力、処置力などの人間にしかできないことに集中するべきだ」と考えたからです。利益率は格段に向上し、会社は飛躍的な成長を実現しました。

家庭向け安全サービスの開拓にも力を入れ、83年には社名をセコムに変更。「社会システム産業」を目指して情報や医療、保険などさまざまな事業に参入しています。現在のセコム・グループは、売上高の約5割強を占める「セキュリティー事業」を中心に、ビル・商業施設や住宅を災害から守る「防災事業」、病院運営支援や看護、介護などの「メディカル事業」「保険事業」「地理情報サービス事業」「情報系事業」「不動産事業」の7事業を展開しています。

 

——オーストラリア進出の狙いはどこにあったのでしょうか?

セコムは78年の台湾を皮切りに、アジアや欧米に積極的に進出してきました。現在、グループ全体で20カ国・地域に拠点を展開しており、中核のセキュリティー事業は11カ国・地域でサービスを提供しています。オーストラリアに進出したのは21年前の92年です。当初は日系企業を中心に活動を始め、現在では需要の中心は主に豪州政府関係機関や現地の企業、家庭などとなっています。

 

他事業とのシナジー効果に期待

——オーストラリア事業の現状と課題をどのようにとらえていますか?


契約先をオンラインでモニターするコントロール・センター


日本国在外公館でも活躍する警備スタッフ

現地の株式市場に上場している台湾と韓国は非常に大きい売上規模があります。これらの2国・地域を除くと、売上高100億円規模となるオーストラリア事業はグループの海外拠点の中では最大級で、グループ全体に占める重要性も非常に高いものがあります。

オーストラリア国内では3大セキュリティー会社の一角を占めています。日本ではセンサーなど機器の開発から製造、機器の設置工事、センターでのモニタリング、警備員の対処まですべてセコム1社で包括的に受注しますが、オーストラリア市場は英国式で機器の提供や設置工事は別々の会社が行う慣習があります。当社はそれらをトータルで請け負うことができるのが強みです。

ただ、課題も少なくありません。日本では自社ブランドで機器も供給していますが、市場の性質が異なるオーストラリアでは汎用品を使用せざるを得ません。またコストのかかる常駐警備へのニーズが高いオーストラリアの警備業界はきわめて労働集約型で、機械警備によるモニタリングが日本やアジア市場と比べ相対的に少ないこともマイナス要素です。人件費など事業コストが高いオーストラリアでは、効率の高い機械警備に市場のトレンドをシフトさせていくことで、より適正な料金で良質なサービスを提供していきたいと考えています。

現状では企業向けのサービスが圧倒的に多く、家庭のニーズがまだまだ少ないのも課題です。家庭向けの安全サービスももっと普及させ、町中にセコムのステッカーを貼ってもらいたいですね。

 

——将来へ向けたビジネス戦略を聞かせてください。

セコムは2015年度までにグループ全体で売上高に占める海外比率を約2倍に引き上げる計画で、弊社はその中で重要な役割を演じることとなります。

セコムは今年、オーストラリア国防省から軍施設のセキュリティー向上を図る事業を約35億円で受注するなど高い信頼を得ています。現在、この国の市場で展開しているのはセキュリティー事業のみですが、今後は医療をはじめ他事業への参入も視野に入れています。日本市場では既に多業種展開によるシナジーが出ているので、オーストラリアでもさらに需要を掘り起こせる余地は十分にあります。

盗難や侵入者から身を守るだけがセキュリティーではありません。例えば、食品会社の冷凍庫にセンサーを設置して温度をモニタリングすることで、万が一冷凍庫が故障しても即座に対応して冷凍食品の損失を最小限にとどめることもできます。高齢者の自宅にセンサーを取り付けて異常があれば対応するといったサービスも可能です。オーストラリアでもより「安全・安心」な社会の実現に貢献していきたいと思います。

テイラーメイドで可能な限り対応しますので、日本人の在住者の皆さんも「こんなことできないの?」といった要望があればぜひご相談ください。

<会社概要>
●英文会社名:Secom Australia Pty. Limited
●企業形態:セコムの現地法人
●代表者:山下卓也・代表取締役社長
●拠点:シドニー、メルボルン、ブリスベン、キャンベラ、オークランド(NZ)
●従業員数:約480人(大半が有資格の警備スタッフ)
●主な事業:セキュリティー・サービス

<沿革>
1992年 シドニーに現地法人設立
2007年  セコム・テクニカル・サービス(キャンベラ)グループ入り
2011年 セコム・ガードオール(NZ)グループ入り
2013年 豪国防省のセキュリティー強化事業を受注


<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:豁達(フータ)
2. 今読んでいる本:「アップル帝国の正体」後藤直義、森川潤・共著
3. 豪州の好きなところ:自然の中に街が共存しているところ
4. 外から見た日本の印象:宅配便などの非常に優れたサービスを生み出し、絶えず進化させる力のある国
5. 好きな音楽:サザンオールスターズ
6. 尊敬する人:飯田亮、戸田壽一
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:決めきれません
8. 趣味:ゴルフ、日曜大工
9. 将来の夢:軽飛行機の操縦免許取得(パイロットになるのが子どものころからの夢でした)
10. カラオケの十八番:もう恋なんてしない

NTTコムICTソリューションズ、橋本吉正 最高執行責任者

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第12回

NTTコムICTソリューションズ

山橋本吉正 最高執行責任者(COO)

日本の大手電気通信事業者NTTコミュニケーションズはこのほど、在豪現地法人「NTTコムICTソリューションズ」を設立した。NTTオーストラリアと傘下の情報通信技術(ICT)企業2社の3ブランドを統合し、ワン・ストップで顧客の要望に応える新体制に移行した。その狙いについて、橋本吉正・最高執行責任者(COO)に話を聞いた。(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

●PROFILE
はしもと・よしまさ
NTTコムICTソリューションズ最高執行責任者(COO)兼NTTオーストラリア最高経営責任者(CEO)
<略歴>NTT Com ICT Solutions COO (NTT Australia MD&CEO)1988年京都大学法学部卒業後、同年日本電信電話(株)入社。電報電話局など現場、本社広報部勤務を経て1995年米国ワシントン大学留学、MBA取得。1997年より一貫して国際事業分野に従事し、2004年より米国駐在、2010年3月よりNTTオーストラリア社長。2013年7月組織統合後現職。

 

3ブランド統合し新体制発足
きめ細かいソリューション提供

 

——まずNTTコミュニケーションズとはどんな会社なのか、教えてください。


移転した新オフィス

NTTグループには現在、大きく分けて6つの事業の柱があります。日本国内で主に固定電話とインターネットのサービスを提供する「NTT東日本」と「NTT西日本」、長距離・国際通信などを手がける「NTTコミュニケーションズ」、ソフト開発事業などを展開する「NTTデータ」、携帯電話の「NTTドコモ」、2010年に買収した南ア系IT大手「ディメンション・データ」の6つです。

このうちNTTコミュニケーションズは、NTT再編の一環で100%出資の子会社として1999年に発足しました。日本国内の都道府県をまたぐ長距離通信、国際通信、法人向けのシステム構築が主な事業です。豪州など海外拠点は法人向けサービスに特化しているのが特徴です。

 

——NTTがシドニーに拠点を開設したのは97年でした。豪州進出の当初の狙いは?

国際通信事業への参入解禁に備え、NTTは企業向けのデータ通信事業を展開するため欧米や香港など次々と海外に進出していました。初期は日系企業の通信ニーズに対応するのが主な目的でした。オーストラリアに進出したのもその一環です。

2000年代に入ると、豪州国内の需要を取り込むことで規模拡大を目指しました。現地プロバイダー「ダブネット」を買収してADSLのインターネット事業に参入しました。ところが、プロバイダー事業はコモディティー化が進み数年で撤退。いったん日系企業中心のビジネスに回帰しました。

その後、戦略を練り直し、地場の有力企業の買収により再び現地市場の攻略を図りました。11年にサーバーやストレージ事業などを手がけるフロントライン・システムズ・オーストラリア、データ・センターなどを展開するハーバーMSPの2社を傘下に収めたのです。

NTTのグローバル資産生かす

——このたび3つのブランドを統合してNTTコムICTソリューションズを立ち上げました。


皆様のご要望にお応えするセールス・スタッフたち

同じ会社なのに3つの組織が別々に動いていたため、顧客にとって分かりにくい面がありました。そのため、当初から計画していた組織の統一を前倒しました。13年に入って3社の機能をシドニーの新しい本社に統合し、同年11月11日に正式に1つの会社としてスタートしました。

旧NTTオーストラリアの社員数は37人でしたが、統合後は約200人と2社のスタッフが大半を占めるようになりました。新会社の最高経営責任者(CEO)もフロントラインからモンテ・デービス氏を迎え入れ、私がCOOとしてサポートする形を取っています。

「ワン・ストップ」(1つの窓口)でサービスが受けられるようになりましたので、顧客の利便性は大幅に向上しました。当社にとっても、1つのブランドを分かりやすい形で市場に訴求できるようになりました。

 

——両者にとって「ウィン・ウィン」と言えるわけですね。ところで、豪州のほかの通信事業者と比べて、NTTコムICTソリューションズの強みは何ですか?

法人向けの通信サービスは、テルストラやオプタスなど大手通信事業者も提供しています。これらの企業は豪国内では強いものの、国際的なプレゼンスはそれほど大きくありません。その点、私たちは海底ケーブルなどNTTグループのグローバルなインフラ網を最大限に生かすことが可能です。


NTTグループのインフラを生かしたクラウド・サービス

一方、データ・センターなどのITソリューション事業ではヒューレット・パッカード(HP)やIBMといったハードウエア・メーカーの存在感が強くなっています。そうした中で、私たちはネットワークとITソリューションの両方で世界展開していることが最大の強みと言えるでしょう。

中でも急速に普及しているクラウドの分野では、ブランド統一のメリットをフルに生かせると考えています。企業にとってのクラウドの利点は、サーバーやストレージのリソースを共有することで、低コストでデータを保管・管理できることです。最近は懸念も徐々に払拭され、重要なデータもクラウドに移行するようになってきました。豪州でも政府のデータをクラウドに移行する動きが出ています。

 

——目下の課題と今後の目標を聞かせてください。

IT事業を差別化できる最大の要素は、実は「人」なんです。顧客のニーズを的確にとらえ、ソリューションを提供できる人材をいかにそろえるか。この国では有能なスタッフは争奪戦になります。雇用の維持にはコストもかかります。良質な人材を安定的に確保していくことが課題です。

一方、コストを削減する通信サービスにとって、景気の悪化は必ずしもマイナスとは限りません。鉱業部門などは厳しいですが、法人向け通信サービスはそれほど影響を受けていません。

従来は従業員数30人前後、年商2,000万〜3,000万豪ドル程度で推移してきましたが、統合後は約200人、2億5,000万豪ドル前後と一気に規模が拡大しました。「エンド・トゥ・エンド」(端から端まで)のきめ細かなICTソリューションを提供できる体制が整ったので、今後はお客様がITソリューションをご検討の際に選択肢の3つのうちの1つに常に名前が挙がることが当面の目標です。

 

日本企業の皆さんにとっても満足できる日本品質のサービスを提供していますので、通信サービスの契約更新の際はぜひ声をかけてください。

<会社概要>
●英文会社名:NTT Com ICT Solutions (Australia) Pty Ltd
●企業形態:NTTコミュニケーションズの現地法人
●代表者:橋本吉正・最高執行責任者(COO)
●拠点:シドニー、メルボルン、キャンベラ、ブリスベン
●データ・センター:シドニー、メルボルン
●従業員数:約200人
●主な事業:クラウド、データ・センター、セキュリティー、ネットワークなど企業向けICTソリューションの提供

<沿革>
1997年 シドニーに現地法人を設立
2011年 Frontline Systems Australia、Harbour MSPを買収
2013年 豪州3 社の組織統合を行い、NTTCom ICT Solutions設立


<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:“Without ambition one starts nothing… .Without work one finishes nothing… .The prize will not be sent to you… .You have to win it.”
2. 今読んでいる本:「怪笑小説」(東野圭吾・著)
3. 豪州の好きなところ:適度に都会で適度に自然があるところ。
4. 外から見た日本の印象:日本食は世界一
5. 好きな音楽:バラード
6. 尊敬する人:バラク・オバマ米国大統領
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス
8. 趣味:麻雀ゲーム
9. 将来の夢:娘と仕事帰りに夜景のきれいなバーで1杯
10. カラオケの十八番:プリプリ

113年続く三井物産の歴史

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進出日本企業

進出日本企業  トップ・インタビュー
第13回

豪州三井物産

高橋康志 社長

豪州における三井物産の歴史は長く113年に上る。日本を代表する総合商社として今日に至るまで、同社は貿易と資源投資を通じ日豪両国とアジアの経済発展に大きな役割を担ってきた。豪州三井物産メルボルン本店に高橋康志社長を訪ね、豪州での事業の歴史や今後の戦略について話を伺った。(インタビュー=メルボルン支局長・原田糾)

●PROFILE
たかはし・やすし
三井物産常務執行役員/豪州三井物産社長兼ニュージーランド三井物産会長
<略歴>1981年慶應義塾大学法学部卒、2000年ハーバード・ビジネス・スクールPGL履修。1981年三井物産入社。入社以来一貫して鉄鋼原料部門に従事し、2006年米国三井物産SVP兼鉄鋼原料・非鉄金属DOO。08年米州本部業務本部長兼米国三井物産SVP。11年執行役員/金属資源本部長、13年執行役員/豪州三井物産社長兼ニュージーランド三井物産会長、14年4月より現職。

 

長期パートナーとして
豪州の発展に貢献

 

——三井物産とはどのような会社ですか。

1876年創業の三井物産は三井グループの中核的企業の1つ。初代社長・益田孝は社員に、「眼前の利に惑い、永遠の利を忘れるごときことなく、遠大なる希望を抱かれることを望む」と訓話しました。これは、目先の利益でなく、日本と世界に貢献できる良い仕事を大きく想起し、希望を絶やさず邁進しなさいという意味で、創業以来、我々に脈々と受け継がれるDNAの1つとなっています。

国家の近代化戦略の柱として「貿易立国」を掲げた当時の日本においてその役割を担うために誕生したのが三井物産で、以来、日本と世界、世界諸国間の貿易に従事する総合商社として今日に至ります。

近年では単なる貿易だけでなく、各種事業の権益を取得し事業に直接参加し、さらに当社が持つ多種多様な機能を繋いで付加価値を生み出すという仕事の進め方が特徴となっています。

世界67カ国に150カ所強の事業所ネットワーク網を持ち、総従業員数は約4万5,000人。連結純利益は2013年3月期3,079億円と高水準を維持し、14年3月期見込みは3,700億円です。

「ラーメンから衛星まで」と例えられる通り、事業は金属資源、エネルギー資源、鉄鋼製品、インフラ事業、機械、化学品、食糧、コンシューマー・サービスと多岐にわたります。

豪州資源産業の勃興・近代化に寄与

——シドニー拠点を開設した当時をご紹介ください。

当社がシドニーに第1歩となる足跡を刻んだのは、豪州が連邦国家として独立した1901年。日本では「殖産興業」「富国強兵」を掲げ、英国などから輸入した紡織機で羊毛や綿花、絹糸などを加工する軽工業を国家として興した時期です。

当時、当社の仕事の中心は羊毛や小麦、鉛などの非鉄金属の対日輸出でした。豪州の資源や食糧を日本向けに輸出し日本が加工する、という今日の日豪貿易の大動脈である貿易パターンの萌芽がこの時に生まれたのです。そして三井物産がその原型の形成に貢献できたことに、豪州地場長の譜系を継ぐ者としてささやかな自負を感じます。

豪州には4拠点があり、最初のシドニーが今年で113年目、1917年設立のメルボルンがあと3年で100周年。33年設立のブリスベンは昨年80周年の記念式典を行い、最後のパースが63年設立とこちらも昨年、50周年を迎えました。

貿易を停止した第2次大戦の直前時点には、当社1社で日豪貿易の3分の1を占める取扱高を誇っていました。戦後も戦前からの3拠点を早急に再開、63年にはパース店を開き、新しい形の日豪貿易を再び開拓していきました。

——戦後の事業形態はどのように変化していきましたか?


WA州ローブ・リバー鉱山で採掘した鉄鉱石の積出港、ケープ・ランバート港

戦後の日本が最も必要とした「産業の米」である鉄を大増産するための原料、すなわちWA州の鉄鉱石、東豪州の石炭の開発がその中心となりました。

ここで強調したいのは、今や豪州を代表するWA州の鉄鉱石産業やQLD州の石炭産業が、産業として当時はまだ存在していなかった点。今日の近代的産業として育成される、その最初の貢献を弊社が担ったのです。

特に石炭は、三井物産の100%出資で探鉱探査を行い、開発のためのジョイント・ベンチャーを組成する。市場は100%日本で、売買契約を仲立ちし、1パートナーとして投資も行い、融資の取りまとめにも協力しと、すべてにおいて主導的役割を果たしました。その最初がQLD州のモーラ炭鉱で設立は63年。近代的な石炭産業の最初のプロジェクトであり、私どもがまさに手作りで豪州産業の勃興そのものに携わった記念碑的な事業です。67年のWA州のマウント・ニューマン、70年のローブ・リバーも同様に、パートナー・日本の製鉄会社と二人三脚で豪州初の鉄鉱石開発に携わっています。

そして特筆すべきなのは、これら豪州の石炭・鉄鉱石事業において最初から今日に至るまで携わり続けているのは三井物産以外にないということです。権益の移り変わりは激しく、ほかのパートナーは出たり入ったりを繰り返しましたが、弊社だけは船を係留する碇のように常に携わり続けて来ました。益田孝の話の通り、長期的な視点と希望を持って各事業に取り組んできた証と言えます。

例えば、現在リオティントと組んでいるローブ・リバーは今でこそ非常に収益性の高い事業ですが、最初の9年は赤字でした。一私企業として、9年連続の赤字事業を持ち続けるのは並大抵のことではありません。それでも撤退しなかった。30年、50年、100年といった埋蔵量が基本となる資源産業を育てるには、「石の上にも30年」の覚悟が必要なのです。我々の先人がそれを実践し、その113年の蓄積が今の隆盛をもたらしていることを感慨深く思います。

さらに70年代には塩、80年代には豪州初のLNG開発事業であるノースウエスト・シェルフ(NWS)、90年にはウッドチップや油田、ガス田開発に参加し、戦後は金属、エネルギー、塩など資源系の事業を大きく拡大しました。

2000年代には鉱山機械のコマツ・オーストラリアへの出資、発電所への初出資、世界最大のリサイクル会社シムズへの最大株主としての出資、風力発電所の開発権取得、2010年代にはWA州ブラウズLNGへの出資、小麦集荷会社への出資などを行いました。さらにGDF Suezの電力事業を共同事業化し、今や豪州第4位の民間発電企業の一員となっています。

豪州第4位の主要輸出業者

——豪州事業の現況をお聞かせください。


QLD州ドーソン炭鉱(旧モーラ炭鉱)での石炭採掘の様子
WA州シャーク・ベイでの塩田事業

過去10年間の豪州事業への投資額累計は130億豪ドル超、約1兆2,000億円に及び、これは日本企業としてトップ、全世界の企業を含めてもトップリストの1社です。さらに上記のような各方面への権益投資によって、豪州の主要輸出品目の持ち分換算輸出量シェアはいずれもメジャーな地位を占めるようになっています。

鉄鉱石4位、石油5位、ガス7位、石炭7位、塩2位、ウッドチップ3位と、石油ではシェブロンやサントスより上位、豪州の主要輸出品目で石炭以外に日本企業の後塵を拝している品目はありません。持分権益ではありませんが、小麦も輸出扱い6位。豪州産全品目の総輸出額は80億豪ドルと日本企業としてはトップ、豪州全体でも4位となっています。

 

——世界展開における豪州事業の位置付けは?

豪州事業への投資額は当社の国別投資先として最大。直近の連結税引後利益の半分強が豪州事業によるものです。三井物産全体にとって豪州事業がいかに重要かお分かりいただけると思います。

豪州の最大の強みは、世界で最も伸びゆく国々、世界経済のエンジンであるアジアに対するプロクスミティーです。アジアの経済を補完する最も優位なポジションにあるのが豪州であり、豪州事業の成長性は今後も申し分なく高い。長期を見据えた時に、アジアの発展に伴ってLNGや石油、ガスといったエネルギー資源、鉄鉱石・石炭などの金属資源、食糧や森林系の農林産品を含めた上流産業の生産品需要はますます増えます。私どももこれまで以上に、豪州の競争力ある産品のアジアへの供給を戦略的に支援して参ります。

——目下の課題と中長期的なビジョンをお聞かせください。

中長期戦略の柱は3つ。1つは資源事業のさらなる強化です。あらゆる資源価格が同時に上昇する「リソース・スーパー・サイクル」時代を経て、現在はピーク時から少し下がったものの、各種資源価格は歴史的に見てまだ高水準にあるという状況です。特に私どもは、初期から権益を保有し続けてきたという長期的取り組みの結果、最もコスト競争力のあるプロジェクト群にポジションがあり、幸いにして引き続き高収益を上げることができています。最近はパートナーとともに上昇したコストを生産性向上によって吸収する取り組みを進めており、エネルギーも金属資源も豪州事業の競争力は引き続き強く、伸びゆくアジアからの需要も増えこそすれ減ることはない。したがってBHPビリトンやリオティントなど信頼できるパートナーとともに、増加する需要に対応すべく、競争力のある資源事業をより強化します。

2つ目は資源周辺事業の強化。鉱山業内部のノウハウを蓄積する我々と鉱山機械トップのコマツが組んで機械を鉱山会社に販売する事例をはじめ、横浜ゴムとベルトコンベア・システムを鉱山会社に納入したり、インペックスのイクシスLNG開発事業にラインパイプを納めたりしています。こういう資源周辺ビジネスをシナジー効果を追求しながら強化し、鉱山業と一緒に成長させていきます。

そして3つ目が、重要成長戦略と位置付ける農林水産業への貢献です。アジアの経済成長により中間所得層が増えるに連れて食生活も高度化し、アジアにおける豪州産農林産品の需要は経済成長率以上のペースで増えると考えており、この分野の発展に戦略的に関わり、貢献していきます。

<会社概要>
●英文会社名: Mitsui & Co. (Australia) Ltd.
●企業形態:三井物産の現地法人
●代表者:高橋康志・三井物産常務執行役員/豪州三井物産社長兼ニュージーランド三井物産会長
●拠点:メルボルン、シドニー、ブリスベン、パース
●現地法人社員数:80人(大洋州内連結従業員数約250人)
●主な事業:鉄鋼製品、鉄鉱石、石炭、発電、鉱山機械事業、化学品、塩、石油、ガス、食糧、ウッドチップなど
● 主な子会社・関連会社:Mitsui Iron Ore Development、Mitsui Iron Ore Corporation、Mitsui Coal Holdings、Shark Bay Salt
<沿革>
1901年シドニー出張所を開設。第2次世界大戦前は豪州産の羊毛、穀物、鉱物を日本に輸出。戦後、55年に豪州に再進出。60年代には炭鉱、60〜70年代には鉄鉱石鉱山や塩、80年代にLNG事業、90年代には石油事業と豪州の資源産業の開発にパイオニア的に貢献。最近10年では、植林・ウッドチップ、発電事業、穀物集荷会社と参画事業分野を拡大。

<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:「Hands on」「世界に、滅私奉公。」
2. 今読んでいる本:「バランスシート不況下の世界経済」リチャード・クー著
3. 豪州の好きなところ:人々の善良さ・大らかさ・遵法精神、自然の美しさ
4. 外から見た日本の印象:politeでdecentだが自己主張が弱く説明能力に欠ける
5. 好きな音楽:たくさんあり過ぎて選べません。
6. 尊敬する人:新渡戸稲造、クレスピ父子、マハトマ・ガンジー
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:ノーコメント
8. 趣味:読書、美術鑑賞、ゴルフ
9. 将来の夢:ノーコメント
10. カラオケの十八番:たくさんあり過ぎて選べません。

進出日本企業インタビュー 第14回「双日豪州会社」

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第14回

双日豪州会社

曾我 英俊 社長

日本の総合商社は戦後、豪州から資源を輸出して高度経済成長を支えると同時に、黎明期の豪州の資源産業に投資することで現在の繁栄につながる基礎を築いた。双日(東京都千代田区)もそうした日豪関係の発展に貢献してきた大手商社の1つだ。合併10周年を迎えた現況と展望について、双日豪州会社(シドニー)の曾我英俊社長に聞いた。(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

●PROFILE
そが・ひでとし
<略歴>
1959年広島県生まれ。横浜国立大卒。2007年双日(株)入社、経営企画部。
10年(株)JALUX執行役員。11年双日(株)食料事業部長。
13年より現職

 

長期的視野で資源に堅実投資
食糧供給基地としても重要

 

——双日とはどんな企業なのでしょうか?

源流は3つあります。1つは1862年に岩井文助が大阪市で起業した舶来雑貨業で、後に岩井商店となります。もう1つは、鈴木岩治郎が1874年に創業した洋糖業を起源とする鈴木商店(神戸市)、後の日商です。これらが合併して1968年に日商岩井が発足します。一方、1892年に大阪市で設立された日本綿花は後に日綿實業、そしてニチメンとなります。2004年に日商岩井とニチメンが合併して現在の双日が誕生し、今年は10周年の節目の年となりました。

事業部門は大きく分けて4つあります。航空機などの「機械部門」、石炭や鉄鉱石、石油・ガスといった「エネルギー・金属部門」、レア・アース(稀少金属)を含む「化学部門」、食糧や肥料、繊維などの「生活産業部門」です。近年は資源価格のボラタリティー(変動幅が大きいこと)が激しいため、非資源分野の割合を拡大しています。経営の安定性を高めるため、ボラタリティーの高い資源分野への依存を改めているのです。資源部門の純利益比率は2006年3月期には約66%に達していましたが、2014年3月期では約26%まで低下しています。

当社が強い分野としては、米ボーイングやブラジルのボンバルディアの輸入を手がけ日本市場シェア1位を誇る民間航空機、輸入量トップ・クラスのモリブデン、年間1,200万トンの輸入量がありロシア産ではトップの石炭などがあります。100万トンを扱うメタノール、シェア20%の工業塩、タイやベトナム、フィリピンでトップ・シェアを占める肥料なども得意分野です。穀物事業にも力を入れています。ブラジルでは穀物生産の川上から川下までのバリュー・チェーンを取得しました。ベトナムの穀物輸入ターミナル(取扱能力300万トン)では小麦、大豆かすなどの飼料穀物を扱っています。

 

——豪州事業の沿革と現況について教えてください。

戦後間もない57年、日商とニチメンがともに豪州に進出しました。当初は豪州産羊毛の貿易が主力でしたが、次第に石炭など鉱物資源・エネルギーの貿易や投資を拡大していきました。本社の合併に伴い、04年に双日豪州会社(ソージツ・オーストラリア・リミテッド)を設立しています。

豪州事業のおおまかな売上比率は、エネルギー・金属が50〜5%、食糧やウッドチップ(製紙原料の木材製品)などの生活産業関連が40〜5%といったところです。


WA州のアルミナ出荷・船積み施設


自社で運営しているQLD州ミネルバ炭鉱

エネルギー・金属では、QLD州とNSW州の石炭権益に投資しているほか、QLD州のミネルバ炭鉱では出資比率を96%まで拡大し、日本の商社では唯一、自社で運営も行っているのが特色です。また、豪英系資源大手BHPビリトンと組んでWA州のアルミ精錬事業に9%出資しているほか、同リオ・ティントと合弁でWA州の工業塩事業にも10%出資しています。自動車や携帯電話などの製造に欠かせないレア・アースの事業では、豪州企業のライナスに出融資しています。

一方、生活産業部門では、豪州産小麦を東南アジアを中心に年間200万トン、同牛肉を日本や東南アジアの一部に年間1万トン輸出しています。国内の植林プランテーションで生産された木材を加工したウッドチップ、パプアニューギニア産の原木なども輸出しています。豪州国内の食品事業では、うどんやそうめんなどの日本麺の製造と販売を手がけるはくばくオーストラリアに一部出資しています。商品は国内の大手スーパーで販売しているほか米国などにも輸出しています。

豪ドル、資源価格は適正化していく

——グループ全体にとって、資源輸出国である豪州は重要な拠点ですね。

有力な資源供給国である豪州のグループ全体の収益に対する貢献度は高い水準にあります。資源事業の対連結純利益比率約26%のうち、何割かを豪州事業が占めています。

鉱物資源だけではなく、食糧資源の供給基地としても豪州は重要です。アジア諸国では豪州産の安心・安全な穀物や牛肉、乳製品などの食糧の需要が伸びています。

 

——豪州経済は、豪ドル高、事業コストの高騰、資源ブームの終息など足元では不安な要素も顕在化してきています。豪州事業の課題は?

以前は豪ドルと商品価格が連動していましたが、近年はこれが乖離していて豪州経済に悪影響を与えているのは確かです。しかし、豪ドルが高止まりしているのは、米国の量的緩和(QE)によるところが大きいと見ています。米QEの出口戦略と終了に伴い、豪ドル高は徐々に是正され、適正な水準に修正されていくでしょう。コスト高への対応については、物流の改革や経営の合理化、運営の機械化などコストダウンの努力を一層進めていきます。

商品市況は短期的に多少波風は立つでしょう。しかし、10〜0年の長期的視点で見れば世界的な資源需要は伸びていくと予想されますので、適正なタイミングで是正されていくのではないでしょうか。

 

——最後に将来に向けた豪州事業のビジョンについてお聞かせください。

エネルギー・金属については、長期的な視点に立脚して投資案件を探し、権益を堅実に増やしていく戦略です。食糧に関しては、人口が増加し中間層の幅が広がっているアジア市場に向けて豪州からの供給をさらに増やします。生産から貿易、物流、消費市場に至るバリュー・チェーンの全行程を見据えて、どの分野にビジネス・チャンスがあり社会貢献が可能かを考え、最適な部分に関与していきます。

先日ダーウィンで開催された日豪経済合同会議では、豪州の食糧供給力と日本の物流の知見や技術をミックスすれば、アジアの食糧需要の拡大に対応できるのではないかという議論がありました。こうした日豪の「協働」がシナジー効果を発揮できれば、食糧問題の解決にも寄与できるかもしれません。

双日グループには「誠実な心で世界を結び、新たな価値と豊かな未来を創造します」という企業理念があります。お客様、パートナー(提携先)、サプライヤー(取引先)などすべてのステークホルダー(関係者)に対して価値を提供することで、社会に貢献していきたいと思います。

<会社概要>
●英文会社名:Sojitz Australia Limited
●企業形態:双日の現地法人
●代表者:曾我英俊社長
●拠点:シドニー、パース、メルボルン、ポートモレスビー
●社員数:27人
●主な事業:石炭、鉄鉱石、アルミナ、化学品、食料、ウッドチップなど

 

<沿革>

1957年 The Nissho Co.(Australia) Pty Ltd.設立
同年Nichimen Australia Ltd.設立
1968年 日商と岩井産業の合併により、Nissho Iwai Co.(Australia) Pty Ltdに改称
1972年 ポートモレスビー出張所設立
2004年 日商岩井とニチメンの合併によりSojitz Australia Ltd.に改称

<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:仁義礼智信
2. 今読んでいる本:「物語 オーストラリアの歴史」
3. 豪州の好きなところ:大自然、スポーツが盛んなこと
4. 外から見た日本の印象:最近少し活力が出てきた
5. 好きな音楽:ポピュラー音楽
6. 尊敬する人:坂本竜馬
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:香川真司、錦織圭、イチロー
8. 趣味:ジョギング、スポーツ観戦、ゴルフ
9. 将来の夢:世界旅行
10. カラオケの十八番:ありません

進出日本企業インタビュー 特別編 「アサヒビール」

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アサヒ・スーパードライ・エクストラコールド・バー」のオープニング・セレモニーでインタビューに応える小路明善・取締役社長

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アサヒビール

小路 明善 代表取締役社長

(アサヒグループホールディングス取締役)

日本の酒造大手アサヒビールが、オーストラリアのプレミアム・ビール市場で存在感を高めている。このほど、主力商品「スーパードライ」の大がかりなCMキャンペーンを始めたほか、マイナス2度に冷やした生ビールを提供する「アサヒ・スーパードライ・エクストラコールド・バー」もシドニー市内に出店した。同店のオープニング式典に合わせて来豪した小路明善・取締役社長兼アサヒグループホールディングス取締役に話を聞いた。(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

外国プレミアムビール・トップ3目指す
オーストラリアをブランド発信の拠点に

 


オーストラリア国内で販売されている「アサヒスーパードライ」

——まずアサヒビールの概略について教えてください。

日本のビール産業が黎明期を迎えた1889年に設立された「大阪麦酒会社」(後の「朝日麦酒」)が源流です。1892年に現在まで続く「アサヒビール」を発売して以来、日本のビールの代表的なブランドとして広く親しまれてきました。1987年には日本初の辛口生ビールとして発売した「アサヒスーパードライ」が大ヒット商品となりました。

2011年に持ち株会社「アサヒグループホールディングス」に移行しました。これにより、中核のアサヒビールはビールや発泡酒、焼酎、酎ハイ、洋酒、ワインなどの製造・販売を手がける事業会社となりました。グループ全体では、①アサヒビールをはじめとする酒類事業、②「アサヒ飲料」(十六茶、三ツ矢サイダーなど)や「カルピス」などの飲料事業、③「アサヒフードアンドヘルスケア」などの食品事業、④国際事業の4つをビジネスの大きな柱としています。

 

——グループ全体で近年、オセアニアの飲料事業に力を入れています。発表によると、オーストラリア法人の売上高はグループ全体の連結売上高の約1割を占めているそうですね。

国際事業は中国とオセアニアで特に存在感が強いのが特徴です。ただ、以前はオーストラリアの酒類大手「フォスターズ」(現在は英SABミラーの小会社)を通して「スーパードライ」を扱う程度でした。2009年に「シュウェップス」や「ペプシ」などを製造・販売する飲料大手「シュウェップス・オーストラリア」の全株式を取得したのを皮切りに、本格的な進出を果たしました。続いて、11年にはオーストラリアの飲料大手「P&Nビバレッジ」からミネラルウォーターと果汁飲料の事業を買収したほか、ニュージーランドでも酒類と飲料の大手2社を相次いで傘下に収めました。さらに、12年にはオーストラリアの飲料水メーカー「マウンテンH2O」も取得しました。

これらの事業を統括しているのが、メルボルンにある「アサヒホールディングスオーストラリア」(勝木敦志・取締役社長)です。昨年10月には事業基盤である、飲料の「シュウェップス・オーストラリア」とアルコールの「アサヒプレミアムビバレジズ」の2つを統合しました。現在、全体で約2,500人の従業員を雇用し、15カ所の工場を操業しています(ニュージーランド2カ所含む)。2014年の目標売上高は17億ドルです。

新しい味わいを体験してほしい

——今年8月に「スーパードライ」のテレビCMキャンペーンを開始したのに続き、10月末には期間限定(2015年1月23日まで)の「アサヒ・スーパードライ・エクストラコールド・バー」も開店しました。なぜオーストラリアのプレミアム・ビール市場に、とりわけ力を入れているのですか?


シドニー市内中心部に開店した「アサヒ・スーパードライ・エクストラコールド・バー」の店内

CMやバーの出店は、オーストラリアの消費者にまず「スーパードライ」を飲んでもらい、価値を知ってもらうための取り組みの一環です。私たちにとって、オーストラリアを含むオセアニアは非常に魅力的で、これからも有望な市場だと考えているからです。

オーストラリアのビール消費量は世界の中で20位から30位程度に位置付けられますが、国民1人当たりのビール消費量は日本の約2倍あります。しかも、地場の低・中価格帯ビールが落ち込む一方で、海外のプレミアム・ビールは毎年2ケタ増と高い伸びを記録しています。オーストラリアを含むオセアニア地域全体のアサヒビールの販売量も、2013年には前年比146%増と急拡大しました。

人口も長期的に増加していくことが予想されますし、経済成長を背景に所得は世界最高水準にあります。消費者の購買力は高く、付加価値の高い新しいタイプの商品に相応の対価を支払うことを惜しみません。そうした先進性はアサヒビールの企業文化にも合っていると思います。

海外で「アサヒ・スーパードライ・エクストラコールド・バー」を出店したのは、韓国に続いてオーストラリアが2カ国目です。エクストラコールドはビールが凍る寸前のマイナス2度に冷やすことで、クリーミーでマイルドな独特の味わいを実現していて、若者や女性にも好評です。「スーパードライ・エクストラコールド」と黒ビールの「スーパードライ・ドライブラック・エクストラコールド」の2種類のほか、爽やかな柑橘系の果物を添えたビアカクテルも提案していますので、オーストラリアでも新しいおいしさを実感してもらえるのではないでしょうか。来客数の目標は5,000人ですが、その2倍は来てもらえると期待しています。

 

——オーストラリア事業の課題と展望をお聞かせください。

当面の目標は、毎年2ケタ増を継続し、外国プレミアムビールカテゴリー内で上位3ブランド入りを目指すことです。物価と所得の水準が高いオーストラリアの消費者は、それぞれの商品が自分に合うかどうか、メリハリを付けて選択するでしょう。価格は高くても好みに合えば、「スーパードライ」だけが持つ「オンリーワン」の価値は認められると考えています。

世界のビール市場を見渡すと、大手の「ビッグ3」(ベルギーのABインベブ、英SABミラー、オランダのハイネケン)がグローバルなM&Aを繰り返していて、競争は激しさを増しています。そうした中で、私たちにとってオセアニアは市場として魅力があるだけでなく、世界のプレミアム・ビール市場で、「スーパードライ」を中核的なブランドとして伸ばしていくための重要な拠点と位置付けています。

私たちの連結売上高に占める海外比率は近年、急拡大しています。しかし、どの市場でも総花的にマーケティングを展開するではなく、重点的に攻略していく戦略です。オーストラリアという「点」から、アジアと世界市場全体の「面」へと「スーパードライ」のブランド認知度を高めていきたいですね。

●PROFILE
こうじ・あきよし
<略歴>1951年生まれ。75年青山学院大学法学部卒。同年アサヒビール入社。2000年人事戦略部長。01年執行役員(経営戦略・人事戦略・事業計画推進担当)。03年アサヒ飲料常務取締役企画本部長。07年アサヒビール常務取締役兼常務執行役員。11年より現職

進出日本企業インタビュー 第15回「三井住友銀行」

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第15回
三井住友銀行シドニー支店

田沼幹夫 豪州支配人支店長

日本の3大メガバンクの1つ三井住友銀行は、オーストラリア進出以来30年以上にわたり、日豪の経済関係の発展に貢献してきた。現在、シドニー支店を拠点に、企業への融資と資源・インフラ関連のプロジェクト・ファイナンスを中心に手がけている。アジアの成長を見据えたオーストラリア事業の戦略と展望について、田沼幹夫・豪州支配人支店長に聞いた。(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

アジアを見据えた重要な拠点
日本と豪州の発展に寄与したい

 

——最初に三井住友銀行とグループ全体の事業について教えてください。

1876年創立の三井銀行と1895年創立の住友銀行が主な源流です。バブル崩壊と金融ビッグバンを経て、当行も前身のいくつかの都銀が合併して生まれました。1990年に三井銀行と太陽神戸銀行が合併して太陽神戸三井銀行となり、92年にはさくら銀行に商号を変更。2001年にさくら銀行と住友銀行が合併して三井住友銀行が誕生します。02年に株式移転により三井住友フィナンシャルグループを設立し、三井住友銀行を完全子会社化しています。

同グループは14年9月末時点で172兆円の総資産を持つ、日本有数の金融グループです。中核の銀行業は、総資産144兆円の三井住友銀行が手がけています。ほかの主な事業会社としては、証券業のSMBC日興証券、コンシューマー・ファイナンス業のSMBCコンシューマー・ファイナンスや三井住友カード、リース業の三井住友ファイナンス&リースなどがあります。

事業分野で特に力を入れているのが海外ビジネスの拡大です。11年から3年間の中期経営計画では海外利益比率30%以上という目標を掲げ、前倒しで達成しました。現在は「アジア・セントリック」(アジア重視)を全面に打ち出しています。日本企業の進出を支援し、アジアの成長を取り込むとともに、非日系企業のアジア進出の橋渡し役になるという狙いもあります。

 

——豪州ではどのような事業を展開していますか?


Team SMBCとして一体感を重視(写真はCSRの一環でチャリティ・ランに参加する職員)

84年から現地法人として活動していましたが、連邦政府が外銀に門戸を開いたことを受けて06年に銀行免許を取得して支店化しました。現地法人時代は融資額に限度がありましたが、支店化によって大型案件への融資が可能になりました。現在では総資産200億ドル、融資額120億ドルの規模に拡大しています。

当行の豪州事業は、①日系企業取引、②非日系大企業取引、③資源やインフラの「プロジェクト・ファイナンス」を中心に手がけています。スタッフは157人(14年9月末現在)程度ですので、資産規模の割には非常に効率的な運営を行っていると思います。資源国の豪州ではプロジェクト1件当たりの規模が大きいことも、特徴となっています。

①・②では、日系のほかに外資や地場の企業とも積極的にビジネスを行っています。③では、液化天然ガス(LNG)・鉄鉱石などの資源・エネルギー開発事業のほか、道路や鉄道、港湾、発電事業などのインフラも手がけています。資源投資は現在、一段落しているものの、インフラについては今後も商機が拡大していくでしょう。連邦政府は高速道路や空港の建設促進を重要政策に掲げ、州政府が保有する電力事業などの民営化にも補助金を提供するなど、積極的にインフラ整備を推進しています。

 

——アジア重視を進めるグループの海外戦略の下では、アジアへの経済的な関与を深める豪州の重要性も高まっているのでは?

当行のアジア・ビジネスの中で、豪州はその成長の最大の牽引役の1つとなっています。具体的な数字は公表できませんが、アジア全体の収益にかなり貢献してきました。

また、豪州では他国・地域と比較して日本の銀行のステータスが高いこともメリットです。オセアニアのシンジケート・ローン(顧客の資金調達のニーズに対して複数の金融機関が協調融資団=シンジケート団=を組織して1つの融資契約書に基づき同一条件で融資を行う手法)の金額ランキングでは、2013年度は当行は豪4大銀行に次ぐ5位。邦銀3行すべてがトップ10位に入っています。

06年の外銀規制緩和で邦銀が相次いで支店化し、豪州事業を強化した直後に、世界金融危機(08年)が発生しました。金融機関にとっては厳しい事業環境ではありましたが、相対的に余力があった邦銀はいち早く資源ブームなどの資金需要に対応することができました。このことが、邦銀が信頼性を高めることにつながったのではないでしょうか。

 

——将来の豪州事業について、どのようなビジョンをお持ちですか?


シドニー湾を臨むオフィス

豪州企業の関心はまだまだ国内に向いており、逆に言えば、彼らのグローバル化にチャンスがあると考えています。特に、著しく成長しているアジア・マーケットでのビジネスに大きな伸びしろがあるのではと感じています。最近発表された大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PWC)の報告書を読むと、「アジア事業の経験のある豪州企業の割合は全体の12%」に過ぎず、「豪州はアジアの成長の機会を逃している」という見方が出ておりますが、正にその通りだと思いました。

豪州は資源・エネルギーや農産物の一大輸出拠点です。しかし、ただモノを輸出するだけではなく、アジアに向けて投資やローカル拠点設立を進め、現地のエンド・ユーザーのニーズをつかみビジネスを展開していく「本格進出」を通じて、真のグローバル化を加速させる必要があります。そこで、戦前からアジアでの豊富なビジネスの知見を持つ日本の企業は、アジアや世界に出て行く豪州企業にとって良きパートナーとなり得るのではないでしょうか。

一方、日本にとっても豪州は大切なパートナーです。資源の重要な供給先として重要なだけではなく、人の往来や文化交流も盛んです。農業やヘルスケア、教育、情報技術(IT)などでの連携強化も期待できますし、インフラの民営化など豪州のノウハウを日本で生かせる分野もあるでしょう。豪州国内にある180兆円の巨額の年金マネーを日本を含む海外にもっと投資できる余地もあります。日本で眠っている莫大な個人金融資産を豪州など海外で運用すれば、もっと国富を増やせるのではないでしょうか。

銀行業には情報産業としての役割もあります。ただ融資するだけではなく、顧客にとって有益な情報を提供することが、サービスの付加価値を高めることにつながります。日本と豪州のノウハウを結びつけることで両国の発展に寄与していきたいと考えています。

●PROFILE
たぬま・みきお
<略歴>1964年埼玉県生まれ。東京外国語大学卒。87年株式会社三井(現三井住友)銀行入行、丸の内支店配属。2012年アジア投資銀行営業部(シンガポール)部長(シンジケーショングループ)。13年4月より現職。

<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:Emotional Intelligence
2. 今読んでいる本:日本神話
3. 豪州の好きなところ:ラグビーのメッカであること、フレキシブルな文化
4. 外から見た日本の印象:オーストラリアよりグローバル
5. 好きな音楽:西野カナ、MIWA
6. 尊敬する人:ハンニバル
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:天智天皇、天武天皇、藤原鎌足
8. 趣味:ラグビー観戦、ジョギング、スペイン
9. 将来の夢:スペイン移住
10. カラオケの十八番:会いたくて 会いたくて
<豪州支店の概要>
●英文会社名:Sumitomo Mitsui Banking Corporation Sydney Branch
●企業形態:三井住友銀行支店
●代表者:田沼幹夫 豪州支配人支店長
●拠点:シドニー、パース(出張所)
●従業員数:157人(2014年9月末現在)
●主な事業:一般銀行業務(ホールセール顧客対象)
<沿革>
1983年 シドニーに現地法人を設立
2006年 豪州の銀行免許と金融サービス免許を取得して支店化
2013年 パース支店開設

進出日本企業インタビュー 第16回「ガリバー・インターナショナル」

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進出日本企業

進出日本企業  トップ・インタビュー

第16回
株式会社ガリバー・インターナショナル

内山千章

海外事業部オーストラリア事業推進室セクションリーダー

日本の中古車買い取り・小売大手ガリバー・インターナショナルはこのほどオーストラリア現地法人を立ち上げ、5月15日に中古車買い取り事業をスタートした。当面は在豪邦人を対象とした買い取りサービスを主眼に置くが、今後は成長性が見込める現地の中古車市場での大規模な小売り展開も視野に入れている。事業立ち上げのためシドニーに乗り込んだ内山千章・海外事業部オーストラリア事業推進室セクションリーダーに話を聞いた。 (インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

信頼の中古車買取販売サービスで
日系コミュニティーに貢献したい

 

——創業以来約20年にわたって急成長してきました。ガリバーという企業の概要について教えてください。

現会長の羽島兼市が1994年に創業した比較的若い会社です。以前の中古車業界は、例えばA社が見積もれば5万円、B社なら10万円といった具合に、適正な価値があいまいな世界でした。そこでガリバーは、中古車の買い取りに特化したビジネス・モデルを立ち上げ、消費者が全国どこで愛車を売っても統一した価格を提示することで、適正な価格の中古車の流通を可能にしました。

また、ガリバーはお客さまから買い取らせていただいた車が2週間以内に売買が成立しなかった場合にはオークションで敏速に売却することでリスクを軽減しロー・コスト運営によって生まれた利益をお客さまに還元する仕組みを確立したのです。

2003年には東証一部に上場。順調にネットワークを拡大し、現在、日本全国に約450店舗を展開しています。高級中古車販売チャネルの「リベラーラ」や大型展示場「ワオタウン」など、コア・ビジネスの買い取りだけではなく業態の幅も広げています。質の高い中古車に安心して乗っていただくため、「10年間保証」や「100日間返品自由」といったサービスも提供しています。

中古車の買い取りという新しい市場を開拓したことで、業界シェア1位のマーケット・リーダーの地位を確立しました。現在では幅広い層の消費者に親しんでいただいています。

中古車の無料査定を行うガリバーのスタッフ

 

——海外展開にも力を入れていますね。

ガリバーは、創業当初から世界に名だたる企業に成長させたいという目標を掲げています。04年に初の海外拠点を米国に設立したのを皮切りに、14年にはタイ、ニュージーランドに進出し、この5月にはオーストラリアでもサービスを開始しました。 ガリバーの海外展開には大きく分けて2つの事業モデルがあります。1つは海外在住の日本人のお客さまのお手伝いです。米国事業がこれに当たります。2 つ目は海外向け現地ブランドの展開です。中古車に対する輸入規制がないニュージーランドは後者のモデルで、日本で販売している中古車を画像販売にて販売しています。一方、タイではフランチャイズ店を通して中古車の販売を行っています。

日本と同じ高品質なサービスを提供

——オーストラリアは現在、中古車1台当たり1万2,000ドルの関税を課しており、実質的な輸入規制を行っています。そうした中で、あえてこの国に進出した狙いと、目指す事業モデルについて教えてください。

ガリバーは18 年に国内と海外で合計800店舗展開を目指しています。海外市場を地域別に見ると、今後の成長性が高いのは東南アジア諸国連合(ASEAN)とオセアニアです。その中で、交通法規が左側通行・右ハンドルで、かつ中古車市場の成長が期待できる先進国となるとオーストラリアしかありません。

そこで、当面は現地在住の日本人のお客さまの車の買い取りをお手伝いすることを主眼に、海外在住邦人数が世界で6番目に多いシドニーに進出することにしました。邦人数1位のロサンゼルス、3位のニューヨーク、4位のバンコクには既に拠点を置いていますので、シドニー進出は必然的な流れだったわけです。

海外在住日本人の買い取りに特化した事業モデルでは、先行している米国で大変好評をいただいています。日本に帰国される際、最後まで車を使いたいという人は非常に多いのですが、個人売買で車を処分するのはとても面倒です。ガリバーなら、空港まで運転して行ってもらえます。当社が空港で車を引き取り、売却代金も日本の口座に送金しますので安心してご利用いただけます。

ウェブサイトのコンテンツも今後充実させていくという

 

——オーストラリア事業の中長期的なビジョンについてお聞かせください。

規制上、日本の中古車を輸入して販売するのは難しいのが現状です。しかし、オーストラリアで現地生産を行っている自動車メーカーがすべて17年中に撤退することが既に決まっており、将来的には状況が変わる可能性はあるのではないかと期待しています。

オーストラリアの中古車市場はこれからどんどん成長していくと見ています。新車市場の年間約110万台の高い水準で推移していることから、今後は中古車市場も熟成されていくでしょう。好調な新車需要が続けば、おおむね5年以内にはしっかりとした中古車市場が形成されると予想しています。

現在は日本人のお客さまを対象とした買い取り事業に特化していますが、これを足がかりにして今後はオーストラリアの現地中古車市場への参入も視野に入れています。年内には小売事業にも進出し、20年にはガリバー・ブランドで全豪100店舗展開を目標に事業を拡大していきたいと考えています。

まずは米国事業の立ち上げから関わった経験を生かし、現地生活を少しでも安心して過ごしていただけるよう日系社会に貢献していきたいと考えています。既に日本でガリバーのサービスを利用された方も、初めてのお客さまも、オーストラリアでも日本と同じ高品質なサービスを提供させていただきますので、車に関する質問があればお気軽に問い合わせてください。また、日本に帰国された後も、米国やニュージーランド、タイに赴任される際も、現地のガリバーを紹介いたしますので、世界規模でガリバーのサービスを利用していただければと思います。

●PROFILE
うちやま・ちあき
<略歴>1969年東京都生まれ。94年オーストラリアへワーキング・ホリデーにて来豪。99年末に日本帰国。2004年株式会社ガリバーインターナショナル入社。08年よりGulliver USAへ。13年より米国責任者として15年1月末まで勤務。

<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:Time is money.
2. 今読んでいる本:「グラスホッパー」「テロリストのパラソル」
3. 豪州の好きなところ:(以前住んでいたので)Memories
4. 外から見た日本の印象:Japan as No1
5. 好きな音楽:All of Music
6. 尊敬する人:会長
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:ミック・ジャガー、スティーブン・タイラー、安倍首相
8. 趣味:音楽、釣りなど
9. 将来の夢:走り続けること
10. カラオケの十八番:Bohemian Rhapsody
<会社概要>
英文会社名:Gulliver Australia Pty Ltd.
事業内容:自動車の買取事業、販売事業、その他自動車流通に関わる事業
設立:2015年2月
連結会社:株式会社ジー・ワンファイナンシャルサービス
株式会社ガリバーインシュアランス
Gulliver USA, Inc.、Gulliver Thai Land,
Gulliver New Zealandなど

 

<ガリバーインターナショナル沿革>
1994年 ガリバーインターナショナル設立
2003年 東京証券取引所市場第一部に指定
2004年 初の海外拠点としてGulliver USA, Inc.を設立
2012年 日本における2012年版「働きがいのある会社ランキング」に23位ランクイン
2015年 Gulliver Australia Pty Ltd.を設立

進出日本企業インタビュー「富士フイルム・オーストラリア」

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Photo: Naoto Ijichi

進出日本企業  トップ・インタビュー

第17回
富士フイルム・オーストラリア

増田清忠 最高経営責任者(CEO)

かつて写真フィルムの世界的なブランドとして知られた富士フイルム。現在では、ヘルスケアや印刷システム、高機能材料など、「B to B」(法人事業)を中心とした幅広い事業分野で強みを持つ総合精密化学メーカーへと変貌を遂げている。オーストラリア市場でのビジネス戦略について、100%出資の現地法人である富士フイルム・オーストラリアの増田清忠最高経営責任者(CEO)に聞いた。
(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

オンリーワン技術を生かし新市場に挑戦していきたい

——20年程前まで、世界中の観光地で「FUJI FILM」の看板を見かけましたが、その後のデジタル化によって写真フィルムの需要は縮小していきました。富士フイルムは現在を「第2の創業期」と位置付け、事業領域の多様化を進めています。

源流は「日本初の国産映画フィルムを作ろう」というビジョンの下で、1934年に設立した「富士写真フイルム」です。同年2月に、写真フィルムや印画紙、乾板などの写真感光材料の製造を始めました。

創業当初から培ってきたこうしたフィルム技術が、長らく当社のコア・テクノロジーとなっていました。50年代からはグローバル化を進め、世界の写真フィルム市場で存在感を高めていきました。しかし、写真フィルムの販売は2000年前後にピークに達し、その後急速に衰退していきます。フィルムを必要としないデジタル・カメラの性能が格段に向上し、急速に普及したからです。

ところが、当社はそれよりもずっと以前の80年前後からこうした流れを想定して、デジタル技術への移行を進めていたのです。このため、時流に乗り遅れることなく、ヘルスケアや印刷などのビジネス分野でデジタル化の波を受け入れ、移行することができました。

現在は、①デジタル・カメラやプリント事業などの「デジタルイメージング」、②医療システムや医薬品、化粧品、サプリメントなどの「ヘルスケア」、③フィルムの塗布技術を生かした液晶パネルの偏光フィルターを主力とする「高機能材料」、④デジタル印刷の統合システムを提供する「グラフィクシステム」、⑤放送用レンズ市場で圧倒的な存在感を誇る「光学デバイス」、⑥富士ゼロックスの事業分野であるオフィス機器などの「ドキュメント」の6つの事業体が、現在のグループのコア・ビジネスとなっています。

「今後は法人向け市場にも積極的に注力していきたい」と話す増田清忠CEO
「今後は法人向け市場にも積極的に注力していきたい」と話す増田清忠CEO/Photo: Naoto Ijichi

——オーストラリア事業の沿革と、現在の主な事業分野について聞かせてください。

オーストラリアではかつて代理店を通して営業していましたが、将来性の高いオーストラリア市場に確固たる基盤を築く必要があると判断し、04年に代理店を買収する形で現地法人を立ち上げました。直接進出してから今年で11年目になります。

旧代理店時代のカルチャーや従業員の意識を変えることが最大の課題でしたが、私が着任してから約3年半でようやくスタッフの志を高めることが出来たのではないでしょうか。

「B to C」(一般消費者向け)の事業の主力は「デジタルイメージング」です。小売大手チェーン「ハービーノーマン」や「ビッグW」の店内、フランチャイズの店舗などで主にデジタル・カメラやスマートフォン(スマホ)で撮影したデータをプリントするサービスを提供しています。

スマホで、いつでもどこでも気軽に高画質な写真を撮影できる便利な時代になりましたが、その半面、膨大な量の画像がスマホの中に眠ったままになっています。そこでこれを取り出して、写真として飾り、家族友達と楽しみを共有し、思い出として残していく。こうして写真文化を守り、発展させていくのが当社の役割であると考えています。

そのための1つの取り組みが、日本で進めている「ワンダーフォトショップ」の店舗展開です。コンセプトは、お洒落な木目調のカフェ風の店内で、画像のプリントサービスを提供するだけではなく、カレンダー、フォト・フレーム、Tシャツ、スクラップ・ブック、マグカップなどさまざまなアクセサリーに写真を取り込んで自在に遊んでもらうというものです。

オーストラリアでもこの9月、ハービー・ノーマンのオーバーン店(シドニー南西郊外)にワンダーフォトショップの国内第1号店をオープンしました。今後も店舗網を拡大し、特に若い世代に向けて写真の楽しみ方を紹介することで、富士フイルム・ブランドの付加価値を訴求していきます。

また、デジタルイメージングの分野では、インスタント・カメラ「インスタックス」の販売にも力を入れています。実はこの商品は、オーストラリアでもヒット商品になっていて、年間数十万台の販売を記録しています。スマホ全盛の時代にあって、すぐにプリントできるアナログなインスタント・カメラが逆に受けています。

一方、「B to B」(法人向け)の事業では、医療事業と印刷事業を2つの大きな成長の柱と位置付けています。特にオーストラリアの医療技術は先進国の中でもトップレベルの質を誇っており、医療現場は最新の診断装置やソフトウエアを積極的に導入しています。非常に魅力の大きい市場であり、今後も順調な伸びを期待しています。

ハービー・ノーマン・オーバーン店に今年9月、オーストラリア国内1号店としてオープンした「ワンダーフォトショップ」
ハービー・ノーマン・オーバーン店に今年9月、オーストラリア国内1号店としてオープンした「ワンダーフォトショップ」

インスタント・カメラ「インスタックス」は、オーストラリア国内で年間数十万台の販売を記録するヒット商品

インスタント・カメラ「インスタックス」は、オーストラリア国内で年間数十万台の販売を記録するヒット商品
印刷事業は「B to B」(法人向け)事業における大きな成長の柱と1つと位置付けられている
印刷事業は「B to B」(法人向け)事業における大きな成長の柱と1つと位置付けられている

——オーストラリアは人口約2,300万人と欧米やアジアの主要市場と比較して市場規模は大きくありませんが、消費者の購買力は高く、人口も伸び続けているため高い成長力が見込めます。この国での事業展開の課題と展望について伺えますか。

広大な国土に散らばる、数少ない大都市に少ない人口が集中しているため、運営の効率が非常に悪いのはデメリットであると考えます。また、流通や人件費のコストが高いのも経営の重しになります。そうしたマイナス要素を除けば、総じて有望な市場だと考えています。

比較的高い出生率や一定の移民受け入れを背景に人口は今後堅実に伸びていく見通しですし、先進技術を積極的に採り入れる資質もあります。消費文化も欧米と似ていますので、人口が少ないとはいえテスト・マーケティングの対象としても魅力的でしょう。

——オーストラリア事業の中長期的な戦略についてお聞かせください。

コンシューマー事業の主力であるデジタル・イメージングの市場では、既に相当なシェアを確保していますので、急激な伸びは期待できませんが、今後も堅調な成長を見込んでいます。

一方、医療や印刷を中心とした法人向け市場は、まだまだ伸びしろは大きいと思います。また新素材の市場性に注目しています。例えば、富士フイルムは高品質なフィルターの技術を持っています。この技術を応用したフィルターはオーストラリア全国にあるワイナリーやビールの醸造工場で潜在的な需要が見込めます。

写真フィルムは完全にデジタル時代に移行しましたが、長年のフィルム製造で培った基礎技術は現在も富士フイルムの大きな強みになっており、こうした新素材の開発にもつながっています。

既存のデジタル・イメージング事業を着実に伸ばしつつ、他社の真似出来ないオンリーワン技術を生かして業績を大幅に伸ばし、オーストラリア経済の発展と国民生活の質の向上に貢献していきたいですね。

●PROFILE
ますだ・きよただ
<略歴>
神戸大学卒業
海外4カ国(タイ、シンガポール、香港、米国)を経験して2012年7月より現職

<トップに聞く10の質問>
1.座右の銘:迅速果断
2.今読んでいる本:坂の上の雲(司馬遼太郎)
3.豪州の好きな所:気候
4.外から見た日本の印象:兎に角、物が豊富
5.好きな音楽:80年代ポップ
6.尊敬する人:スティーブ・ジョブズ
7.有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:スティーブ・ジョブズ、ダイアナ妃、ジョン・レノン
8.趣味:サッカー、ラグビー観戦、ゴルフ
9.将来の夢:田舎生活
10.カラオケの18番:Unfair World
<豪州支店の概要>
英文社名: FUJIFILM Australia Pty Ltd
事業内容: デジタルイメージング、医療、印刷製品などの販売
代表者: 増田清忠CEO
拠点: シドニー本社、メルボルン、パース、ブリスベン、アデレード支店
従業員数: 225人(15年10月現在)
<沿角>
2004年 シドニーに現地法人を設立

進出日本企業インタビュー第18回「全日本空輸株式会社」

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進出日本企業  トップ・インタビュー

第18回 全日本空輸株式会社

定行 亮 シドニー支店長

「青い翼」がオーストラリアの空に帰ってきた。映画「スターウォーズ」の特別塗装を施した全日本空輸(ANA)の羽田−シドニー第1便は2015年12月12日朝、シドニー・キングスフォード・スミス国際空港に到着した。オーストラリア路線復帰の狙いと今後の展望について、定行亮・シドニー支店長に聞いた。 (インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

シドニーから羽田経由で全国へ
夜発・朝着でシームレスに接続

——初めにANAグループの概要についてお聞かせください。

1957年に「日本ヘリコプター輸送」として創業しました。その後、日本の高度経済成長の一翼を担う国内線専業の航空会社として発展しましたが、86年に国際線定期便就航を果たしました。2016年春には国際線就航30周年を迎えます。

現在、国内線と国際線の割合は収入ベースでおよそ6対4です。グループ全体の中期経営計画では、さらに国際線事業を強化していく方針を掲げ、国際線の割合をまず5割まで高めることを目指しています。

13年に持株会社制に移行し、ANAホールディングスの下で、中核企業である全日本空輸、ANAウィングス、エアジャパン、ロー・コスト・キャリア(LCC)のバニラ・エアなどの「航空事業」、空港地上支援、航空機整備、貨物・物流、ケータリング、コンタクトセンターなどを手がける「航空関連事業」、「旅行事業」、「商社事業」などを展開しています。各社の役割をより明確化し、自立して世界で通用する価値創造ができるよう、持ち株会社制によるグループ経営へと変革しました。

部門別の売上高構成比(15年3月期)を見ると、ANAを中心とした航空事業が全体の4分の3を占めます。国内線輸送旅客数は日本国内1位、世界9位、国際線を含めた総輸送旅客数は世界15位の規模があります。保有機材数(15年3月31日時点)は234機あり、国内50都市、海外38都市に就航しており、今回のシドニーが39都市目です。航空貨物事業では近年、沖縄をハブにしたアジアへの輸送に力を入れています。グループ全体で約3万5,000人の社員を雇用し、そのうち約1万2,000人がANAに在籍しています。

——ANAはかつてシドニー~成田線を運航していましたが、オーストラリアを訪れる日本人観光客市場の低迷を背景に自社運航便を99年に、共同運航便を01年にそれぞれ廃止しました。90年代の最盛期には年間90万人以上の日本人がオーストラリアを訪れていましたが、現在では3分の1以下に減少しています。一方、当時少なかった訪日オーストラリア人はこのところ急増しており、14年は30万人を突破しました。そうした中で、ANAがオーストラリア線を再開した狙いは?

主に2つの側面があります。1つはANAのグローバル戦略です。ANAは国際線参入以来、一貫して海外路線網を広げてきましたが、近年は日本国内の人口減を背景に国際線の重要性が更に増しています。そこで、シドニー線の撤退以来ANAの国際線ネットワークの中で空白地帯となっていた南半球(ジャカルタなど赤道に近い一部の都市を除く)に、もう一度参入したいと考えたのです。

2つ目は、日豪の2国間関係が近年、大きく様変わりしたことです。以前に就航していた頃、日豪間の航空市場の大半はハネムーンやパッケージ・ツアーなどの日本発の観光需要でした。現在も大幅に減少したものの日本人観光市場は一定の需要を維持しています。しかし、これに加えて、日豪間のビジネス交流は従来の資源を中心とした貿易からサービス産業など幅広い産業に裾野が広がり、日豪経済連携協定(EPA)が締結されるなど今後の需要拡大も見込まれています。北海道や長野県のスキー、東京や京都の観光を中心に、オーストラリア人の訪日需要も急拡大しています。ビジネスと観光の両面で、日豪の双方向に、人の流れが加速しているのです。

2015年12月12日、シドニー空港に到着した「R2-D2™ ANA JET」(撮影:馬場一哉)
2015年12月12日、シドニー空港に到着した「R2-D2™ ANA JET」(撮影:馬場一哉)

ビジネス・パーソンのお客様にとっては、羽田発着のメリットは非常に大きいものがあります。シドニーを夜出発して羽田に朝到着しますから、日本人のご出張者、オーストラリア人のビジネス・パーソンも東京に着いてすぐに仕事ができるとともに、羽田から全国各都市に向かう国内線にもシームレスに(切れ目なく)乗り継いで頂けるのです。オーストラリアにお住まいの邦人の方が地方に帰郷される際も、大抵午前中には故郷に到着して頂けます。

タラップでは新制服のCAとスターウォーズの人気キャラクター、ヨーダのぬいぐるみがお出迎え(撮影:馬場一哉)
タラップでは新制服のCAとスターウォーズの人気キャラクター、ヨーダのぬいぐるみがお出迎え(撮影:馬場一哉)

また、復路も羽田を夜に飛び立つので、都心の会社で働いている方が仕事の後にすぐに搭乗して頂けるだけではなく、日本の各地方都市からもゆっくり地元でお過ごしになってからのご出発でスムーズに乗り継いで頂けます。シドニーには朝到着しますので、貴重な時間の節約になるだけではなく、オーストラリア国内各都市へも短時間でお乗り換え頂けます。

ビジネス・クラスには、フルフラットシートに加え隣の人と重ならないように交互にずらして配置したシート「ANA Business Staggered」を採用しましたので、夜もゆっくり休んでいただけるのも利点です。しかも、日豪間の時差はたった1時間(NSW州などの夏時間実施中は2時間)しかありません。

地方経済の活性化に貢献したい

——オーストラリアの人口は約2,300万人と他の主要市場と比較して規模は小さいものの、長年の経済成長を背景に所得水準は高く、人口増加による今後の市場拡大も見込めます。親日的な国民が多く、人口1人当たりで見ると英語圏の先進国ではトップ・クラスの訪日需要があります。オーストラリア路線の重要性について考えを聞かせてください。

まずオーストラリアを訪れる日本人市場を見ると、連邦政府は政策として観光振興に力を入れており、豊富な大自然、固有の文化、美味しい食べ物、治安の良さといった観光デスティネーションとしての良さもそろっています。そうした魅力と日本各地と結ばれる羽田発着の利点を最大限に活かすことで、全国のお客様の目を再びオーストラリアに向けて頂きたいですね。やり方次第では、日本人のオーストラリア観光需要が回復する余地はまだ十分にあるでしょう。

次に、訪日するオーストラリア人市場については、安定した経済成長を背景に国民が豊かで、旅慣れた人が多いという特徴が生かせると思います。日本の地方では現在、定住人口が減少する中でいかに多くの外国人を呼び寄せて交流人口を増やすかが、地域経済活性化の課題となっています。その点、日本を訪れるオーストラリア人は1人当たりの支出額が多く、滞在期間も長いというデータが出ています。日本にとってオーストラリア人は良いお客様なのです。

しかし、地方の観光地では外国人に対応した基盤整備が、なかなか進んでいないのが現状です。旅慣れたオーストラリア人の声を地方の観光インフラの拡充やサービスの改善に生かせば、観光産業の発展、地方経済の活性化という好循環につなげていけるでしょう。地方都市へ楽に短時間で乗り継ぎができるシドニー~羽田路線の開設を機に、充実したANAの国内線ネットワークを生かして、1人でも多くのオーストラリア人が日本の津々浦々を旅して交流してもらえればと思います。

——今後のオーストラリア事業のビジョンについてお聞かせください。

インタビューに応じる定行亮シドニー支店長
インタビューに応じる定行亮シドニー支店長

ANAは現在、米国本土には8路線の自社便を運航しています。オーストラリアもアラスカを除く米国本土に匹敵する広い国土がありますが、人口は約2,300万人と米国の約14分の1の規模です。そのため、現状では、メルボルンやブリスベン、パース、アデレードといった他都市への就航は将来的な課題になるでしょう。まずはシドニー~羽田線でしっかり足場を築いていきます。

成田、羽田の2つの空港の役割を明確に分け、「グレーター・トーキョー」(東京圏)全体の競争力を高めていくというのがANAの戦略です。成田は北米とアジアを中継するハブ空港、羽田は海外と日本国内の各都市をつなぐハブ空港、と位置付けています。今回開設したシドニー~羽田線は、後者のコンセプトです。

日本の地方経済は人口減少による低迷という現実に直面しています。シドニーから羽田を経由して日本の地方都市をシームレスにつなぐことで、日豪間の更なる交流促進、特に豪州発のインバウンド需要を喚起し、日本の地方再生に少しでも貢献したいと考えています。

●PROFILE さだゆき・りょう
<略歴>1963年生まれ。国際基督教大学教養学部語学科卒業。86年、全日本空輸㈱入社。東京支店旅客部、国際旅客事業部業務部、大阪支店国際販売部などに配属。ロサンゼルス支店マネージャー、東京支店国際販売部長、長崎支店長などを経て、2015年10月より現職

<会社概要>
英文会社名:ALL NIPPON AIRWAYS CO., LTD.
事業内容:定期航空運送事業、不定期航空運送事業、航空機使用事業、その他附帯事業
設立:1952年12月
連結会社:ANAウイングス、エアジャパン、バニラ・エア、全日空商事、ANAセールス、ANAテレマート、ANA CARGO、ANAエアポートサービスなど

<会社沿革>
1952年12月 日本ヘリコプター輸送株式会社を設立
1957年12月 社名を全日本空輸株式会社と変更
1961年10月 東京、大阪証券取引所市場第二部に上場
1971年 2月 国際線不定期便運航開始(東京-香港)
1972年 8月 東京、大阪両証券取引所市場第二部から市場第一部に上場
1986年 3月 国際定期便を運航開始(東京-グアム)
1991年10月 ロンドン証券取引所に上場
1994年 9月 関西国際空港への乗入れ開始
1999年10月 航空連合スターアライアンスに加盟
2013年 4月 持株会社制の移行により、新生全日本空輸株式会社としてスタート

進出日本企業インタビュー第19回「マエカワ・オーストラリア」

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進出日本企業  トップ・インタビュー

第19回 マエカワ・オーストラリア

本田 栄悟 取締役社長

(Photo: Naoto Ijichi)
(Photo: Naoto Ijichi)

前川製作所(本社・東京都江東区、前川正・代表取締役社長)は、業務用冷凍・冷蔵機の世界市場で3本の指に入る大手メーカーだ。特に環境負荷の低い「自然冷媒」や、鶏肉や豚肉の「食肉加工ロボット」で強みを持つ。オーストラリアには30年以上前に進出し、「マイコム」(MYCOM)ブランドの冷凍・冷蔵機のコンプレッサーを主に食品・飲料業界向けに卸している。現地法人マエカワ・オーストラリアの本田栄悟・取締役社長にビジネス戦略を聞いた。 (インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

地球に優しい冷凍・冷蔵機で強み
高付加価値のプラント事業に視線

――初めに、前川製作所という企業の概要をお聞かせください。

創業家の前川家が戦前に営んでいた氷の卸売問屋がルーツです。1924年に創業し、後に卸売だけではなく、製氷も手がけるようになりました。その技術を生かして、冷凍機の製造も始めました。現在の主力事業は、業務用のコンプレッサー(冷凍機の心臓部分の機械)、冷凍機、冷蔵庫などの製造ですが、今でも氷の製造・販売は続けています。

ニッチなマーケットですが、業務用冷凍庫・冷蔵庫のプラント・メーカーとしては、ドイツのゲア(GEA)グループ、米国のジョンソン・コントロールとともに、世界市場で3強の一角を占めています。主に大手食品メーカー様の巨大な冷凍庫や冷蔵庫の他、ビールの製造工程で発酵時に出る熱を抑える冷蔵設備、牛乳を冷やす設備なども手がけているんですよ。

チキン骨付きもも肉全自動脱骨ロボット「トリダス」
チキン骨付きもも肉全自動脱骨ロボット「トリダス」

――――前川製作所が持つ技術的なアドバンテージは何ですか?

強みは、地球環境に優しい「自然冷媒」への取り組みです。冷凍や空調、給湯の工程では熱を移動させるために「冷媒」という物質が欠かせません。冷媒の主力はかつてアンモニア(NH3)でしたが、フロンガスに切り替わりました。ところが、近年はオゾン層を破壊するフロンの使用が規制され、温暖化効果が高い代替フロンの規制も強化されています。

そこで、環境負荷の低いアンモニアなどの冷媒が見直されています。前川製作所は以前からアンモニアを冷媒に使った冷凍・冷蔵機で高い技術を持っていました。これに加えて「炭化水素系」(HC)、「二酸化炭素」(CO2)、「水」(H2O)、「空気」の5つの自然冷媒で、付加価値の高い技術を誇っているのです。

また、プラントの豊富なノウハウを応用した「食肉加工ロボット」も得意な分野です。前川製作所は1994年、完全に自動で鶏肉の骨を取り除く鶏肉加工ロボット「トリダス」の開発に日本で初めて成功しました。鶏肉に続いて、1時間当たり150〜200頭の処理能力を持つ豚肉加工ロボットも開発し、食肉業界の生産性向上を支えています。

牛肉加工ロボで技術革新起こしたい

――――一般の消費者にはなじみが薄い「B to B」(企業間取引)の業態ですが、実は生活に身近な分野で私たちも恩恵を受けているんですね。オーストラリアでは、どのような事業を展開しているのですか?

私たちは小さな町工場からスタートしましたので、「日本で認められるためには、世界で認められなければならない」という考えが強くあり、ずいぶん以前から海外に目を向けていました。1961年に旧ソ連にプラントを納入したのを皮切りに、64年に初の海外工場をメキシコに設立しました。以来、北米・中南米、欧州、東南アジアなどに次々と工場や販売網を広げていきました。現在では、日本国内と海外の売上高の比率はおおむね1対1といったところです。

食品製造工程の自動化は、前川製作所のオンリー・ワン技術だ
食品製造工程の自動化は、前川製作所のオンリー・ワン技術だ

オーストラリアにも今から32年前の1984年に進出し、コンプレッサーの供給を開始しました。15年前に、コンプレッサーをパッケージにして冷凍装置メーカーに卸す事業も始め、現在ではおおむねコンプレッサー単体が50%、パッケージが50%の比率となっています。主に、食品メーカーや食肉加工業者の倉庫にある冷凍・冷蔵施設、乳製品メーカーの冷蔵施設、ワイナリー(ワイン醸造所)の発酵を管理する冷蔵庫などの用途に使用されています。

オーストラリアの人口は一定の移民受け入れや高い出生率を背景に増加していますので、国内の食品業界の冷凍・冷蔵の需要は安定的に伸びています。また、牛肉の中国向け輸出が近年急増していることから、食肉業界のニーズも高まっています。

現在、シドニー南部のマトラビルとニュージーランドのオークランドに拠点があります。現状では、装置の納入と部品の供給のみで、アフター・サービスは冷凍工事会社が担当しているので、行っていません。ただ、我々のお客様と競合しないような、メーカーにしかできないアフター・サービスを、いずれは手がけたいと思います。

オーストラリアは他の主要市場と比較すると決して人口は多くありませんが、「テスト・マーケット」としてのメリットは大きいと考えています。オーストラリアで成功すれば、他の欧米市場でもうまく行く可能性があります。何か新しいアイデアを試すには、最適な市場だと言えるでしょう。

――――今後のオーストラリア事業のビジョンについてお聞かせください。

例えばビール工場の設計といったプラント全体を受注するのが、日本市場での前川製作所の主力事業になっています。オーストラリア市場では現状、あくまでも装置や部品のサプライヤーという立ち位置ですが、いずれはプラント全体のシステムを請け負う付加価値の高い事業にシフトしていきたいと考えています。

また、世界初の牛肉加工ロボットを開発して、オーストラリアに導入したいという構想も持っています。鶏や豚はある程度大きさが整っているので、試行錯誤の末、加工ロボットの開発に成功しましたが、牛は体が大きい上にサイズや種類がまちまちなので難しく、まだ実現していません。

牛肉はオーストラリアの主力輸出商品の1つであり、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定が発効すれば、今後の伸びも期待できます。まだ壮大な夢の段階ではありますが、牛肉加工ロボットでオーストラリアの畜産業界に画期的なイノベーション(技術革新)を起こしたいと考えています。

●PROFILE ほんだ・えいご
<略歴>1968年生まれ。北海道出身。国立苫小牧工業高等専門学校工業化学科卒業。1990年、前川製作所に入社。2015年2月シドニーへ赴任後、同年6月より現職

<会社概要>
英文社名:Mayekawa Australia PTY. LTD.
事業内容:産業用冷凍機並びに各種ガスコンプレッサーの製造販売、農畜・水産・食品、飲料関連製造プロセス冷却設備の設計施工など
代表者:本田栄悟
拠点:シドニー本社、ニュージーランド・オフィス(オークランド)
従業員数:15人

<沿革>
1924年 東京に前川商店として設立
1985年 シドニーに現地法人を設立

進出日本企業インタビュー「近鉄エクスプレス・オーストラリア」

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進出日本企業  トップ・インタビュー

第20回 近鉄エクスプレス・オーストラリア

坂本 真司 取締役社長

(Photo: Naoto Ijichi)
(Photo: Naoto Ijichi)

航空貨物と海上貨物、ロジスティクス(倉庫)事業を手がける日本有数の物流企業、近鉄エクスプレス(KWE)。オーストラリアでも、空、海、倉庫の物流サービスをワンストップで提供している。在豪現地法人の坂本真司・取締役社長にオーストラリア市場での戦略と展望を聞いた。 (インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

グループの世界ネットワーク生かし
付加価値高いサービスを豪州に提供

――まずは近鉄エクスプレスの概要について教えてください。2015年3月期のグループ全体の営業収入約3,270億円のうち約3分の2を海外事業が占めていて、グローバル化が進んでいますね。

坂本取締役社長。保管貨物が積まれた自社の倉庫にて
坂本取締役社長。保管貨物が積まれた自社の倉庫にて

私鉄大手の近畿日本鉄道の業務局が1948年に開始した国際貨物・旅客取り扱い事業が源流です。55年には近畿日本ツーリストに発展し、69年に香港と米国に現地法人を設立して海外進出を果たしました。70年に国際航空部門が近鉄航空貨物として独立し、89年に現在の社名に変更しました。

その後、海外展開を加速させ、現在では日本、米国、欧州、東アジア・オセアニア、東南アジアの世界5極体制の下で、34カ国の226都市に374拠点を構えています。地域別の営業収入の割合(15年3月期)は、日本36.6%、米州12.8%、欧州・中近東・アフリカ11.1%、東アジア・オセアニア26.6%、東南アジア12.3%となっています。

中でも、85年に北京に駐在員事務所を開設して以来、中国事業に力を入れ、現在、41都市に125拠点、倉庫55カ所、17法人を構えています。12年にインドに合弁の「ガティ-KWE」を設立、15年にシンガポールの物流大手APLロジスティクス(APLL)を子会社化し、中国以外のアジア地域にも事業を広げてきました。

――アジア・オセアニア地域では、日系物流大手のM&A(企業の合併・買収)を軸に再編が加速しています。KWEがAPLLを1,500億円で買収した狙いは?

APLLの取得にあたって、本社の石崎哲・取締役社長は、会見でこう述べています。「近鉄エクスプレスの航空・海上フォワーディング力(輸送能力)とAPLLが持つバイヤーズ・コンソリデーション(複数の工場で生産された商品を買い付け、船積み地でコンテナに混載することで、物流を集約する形態)などのコンストラクト・ロジスティクス(第3者の運営会社による倉庫運営)機能を組み合わせることで、顧客に新たな価値を提供できる」

買収後、KWEグループの事業比率は航空貨物35.8%、海上貨物20.6%に対して、ロジスティクスが36.5%と大幅に増えました。今後もシナジー効果の最大化に取り組んでいきます。

日本式のきめ細かいサービスに強み

――次にオーストラリア事業についてうかがいます。

91年の現地法人設立以来、今年で設立25周年を迎えました。09年には自社で通関業務を始め、11年にはロジスティクス(倉庫)事業への本格参入を果たしました。

現在、国際航空輸送、国際海上輸送、ロジスティクス・サービスに加えて、顧客のニーズに応じたサービスやソリューション(解決策)の提案、オーストラリアの市場動向に関する情報も提供しています。現在はまだオーストラリアに拠点がない企業の相談にも対応しています。

ロジスティクス・サービスでは、倉庫で商品を保管するだけではなく、倉庫内で顧客の商品を加工したり、英文の取り扱い説明書を挿入したりといったアウトソーシング業務も手がけ、高い付加価値を提供しています。

現地のクーリエ(宅配便)会社と提携して、ネット・ショッピング需要の拡大に対応したB to C(企業から消費者へ)の小口輸送にも力を入れています。傘下のAPLロジスティクスのオーストラリア法人とも連携し、例えば中国からオーストラリアに戻るコンテナの空きスペースの有効活用にも取り組んでいます。

オーストラリア市場の魅力は?

――オーストラリア市場の重要性と今後の展望について、お考えを聞かせてください。

安定した政治や経済、人口増の恩恵もあって、業績は順調に推移しています。足元の景気はやや足踏みしていますが、将来的にはまだまだ成長していくでしょう。

オーストラリア市場の最大の魅力は、長期的な人口増が予想されることです。市場規模の拡大に伴って、衣食住関連の物流需要は必ず伸びると見ています。15年に発効した日豪経済連携協定(EPA)が2国間貿易に与えるプラスの影響、日本直行便の増便も追い風となるでしょう。日本食人気を背景に、日本の食材の取り扱いも増えています。

KWEシドニー・オフィス外観
KWEシドニー・オフィス外観

KWEのグループ会社の主な顧客である欧米企業が、アジア事業を統括する拠点としてオーストラリアに地域本部を置くケースも少なくありません。そうしたグローバルな顧客との関係を維持・強化していく役割も重要です。従来は日系企業が欧米進出の足がかりにオーストラリアに進出するケースがよく見られましたが、今ではアジア進出を念頭にオーストラリアに拠点を置く欧米企業が増えているのです。

一方、オーストラリアは広い国土の割にはまだまだ人口が希薄で、労働力など人的資源の希少価値が高く、事業コストが非常に高くつきます。市場規模が小さいため、少数の大手企業が市場を寡占する傾向が強く、物流業界でも多くのプレーヤーが共存できる機会は限られてしまいます。

そうした厳しい環境の中で、KWEの最大の強みは世界的なネットワークでしょう。グループ力を生かしたグローバル規模の提案を行い、APLLとのシナジー効果で多角的にアプローチできます。日本水準のきめの細かいサービスも利点です。欧米の大手物流企業にはできない高い品質を武器に、今後もサービスの更なる向上に努めていきます。

●PROFILE さかもと・しんじ
<略歴>創価大学(文学部英文学科)卒業。1990年より10年間オランダ駐在。2010年7月より現職

<会社概要>
英文社名:Kintetsu World Express (Australia) Pty Ltd
事業内容:航空貨物、海上貨物、ロジスティクス(倉庫)事業
代表者:坂本真司
拠点:シドニー、メルボルン
従業員数:35人

<会社沿革>
1987年 駐在員事務所をシドニーに開設
1991年 現地法人をシドニーに設立
1992年 メルボルン支店開設

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